【深掘り】米軍PCB廃棄物、返還地への放置も示唆 どうなる処分方針? にじむ地位協定で責任回避


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ポリ塩化ビフェニール(PCB)が検出された航空自衛隊恩納分屯基地。復帰前は米軍施設として使用されていた=2002年4月、恩納村

 人体に有害なポリ塩化ビフェニール(PCB)廃棄物が在日米軍基地に残されている問題で、日米間で処分方針に関する協議が続いている。高濃度のPCB廃棄物は本来の処分期間を過ぎており、民間業者であれば違法状態。低濃度の廃棄物も期限が迫る。日本国内がPCBなき社会に向かう中、米軍の保有分については日本側が総量さえ把握できず、処分方針も定まっていない。一連の経緯からは、日米地位協定を盾に自らの責任を回避しようとする米軍の狙いも透ける。

 PCBは電気を通しにくいなどの性質から、絶縁用の油などとしてかつては世界的に使われていた。電気設備などに含まれている。1968年に西日本一帯で起きた食品公害「カネミ油症事件」で食用油に混入していたことからPCBの毒性は社会問題となり、製造と輸入も禁止されている。

 それ以降、民間主導で処理施設の建設が試みられたが、有害物質を含む廃棄物であることなどから反対運動を受けて約30年、進まなかった。ようやく2004年に国が全額出資して特殊会社「中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)」が発足し、全国5カ所に処理施設が造られた。高濃度PCB廃棄物はJESCOに委託して処分することが義務付けられた。

 住民の抵抗感が強い処分施設を地域に受け入れてもらうため、あらかじめ地元に操業期間や処分量の目安を示し、終了後は撤去することを約束して処分を進めてきた。過去に処分期間を延ばした際も地元から反発があった。

 高濃度廃棄物の処分期間は遅い地域でも今年3月までだった。それでも間に合わなかった業者らへの救済措置として21年には環境相が各立地自治体に要請し、特例として処理を継続している段階だ。

 政府関係者によると、米軍は残っている廃棄物について本国への持ち帰りを渋っている。日本製についてはJESCOへの委託が検討されるとみられるが、地元の反発も予想される。そもそも総量を把握できなければ対応できない。多くを占めるとみられる、米軍が持ち込んだ国外製品は日本での廃棄は想定されていない。

 米軍は処分が難航すれば返還跡地に放置するという選択肢も示唆しているという。地位協定4条で米軍は環境汚染に対する原状回復義務、損害賠償義務が免除されている。返還跡地で廃棄物や汚染が見つかれば、日本政府の負担で処分することになる。米軍は過去にも県内でPCB汚染を起こした事例がある。日本政府が米軍による地位協定の乱用を許さず、責任を持って処分させることができるかが今後の焦点となる。

(明真南斗)