沖縄芝居「三良若按司」20年ぶり上演 名優・玉城須美雄の名作、庶民の姿生き生きと 国立劇場おきなわ


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 国立劇場おきなわ主催の沖縄芝居公演、時代明朗劇「三良若按司(さんらーわかあじ)」が6月24、25の両日、浦添市の同劇場で開催された。「三良―」は名優・玉城須美雄(たまきすみお)(1922~2004年)の隠れた名作で約20年ぶりの上演。糸満と小禄のしまくとぅばを取り入れ、庶民の姿を明るく生き生きと描いた。演出は金城真次。

 作者の玉城は、琉球舞踊や沖縄芝居の大家として知られる渡嘉敷守良の高弟。戦前から修業を積み、戦後は重厚な役から三枚目まで演じ独自の芸域を確立した。「三良―」では瀬長大親(うふや)を演じていた。

三良(右・上原崇弘)の世話係として瀬長大親(中央・嘉数道彦)にこき使われ、愚痴をこぼすトゥカー(高宮城実人)=6月24日、浦添市の国立劇場おきなわ

 あらすじは、小禄の肉売りトゥカー(高宮城実人)が、豊見城城の老臣・瀬長大親(嘉数道彦)と出会う。瀬長大親は、豊見城按司(平良進)が若い頃に村の娘との間にもうけた男児を世継ぎとして捜していた。トゥカーは友人の糸満漁師・三良(上原崇弘)がその男児だと気付く。三良は若按司、トゥカーは下男として城に迎えられる。一方、潮山大親(宇座仁一)は豊見城按司の失脚を画策するが、トゥカーや三良の活躍で陰謀を打ち砕く。

 漁師や肉売りといった庶民の暮らしぶりを描きつつ、悪を懲らしめる痛快な物語で楽しませた。三良と恋人のウサ小(奥平由依)は糸満、トゥカーは小禄の言葉で話し、しまくとぅばの多様性を示す意味でも良い作品だった。

「早口説」を踊る瀬名波孝子

 「三良―」に先立ち、喜劇「家庭円満菓子」と舞踊3題も上演した。90歳にして現役で活躍する瀬名波孝子は「早口説」を踊った。「早口説」と「中作田節」の2曲構成で、扇子をたくみに扱う前半は真境名由康、後半の手踊りは玉城盛義の振り付けという。観客を喜ばせる役者の技と心がこもった演舞だった。

 同劇場の沖縄芝居公演では格調高い名作歌劇や史劇にも力を入れてきたが、今回は肩の力を抜いて楽しめる大衆演劇としての魅力を発信した。「慰霊の日」直後ということもあり、娯楽を味わい、笑いを共有できる平和のありがたさも実感した。

(伊佐尚記)

 

「家庭円満菓子」で毒入りまんじゅうを勧め合う妻(左・伊波留依)と母(右・伊禮門綾)の間に入る正夫(玉城匠)