電照キク畑で電線切断の被害相次ぐ 銅線売り払い目的の盗難か 沖縄・うるま市


この記事を書いた人 琉球新報社
電線が窃盗されたところを指さす栽培農家の兼島兼正さん。道路に近い部分は電線が3本通っているが、途中から1本の電線が切断されて2本になっている=19日、うるま市石川

 うるま市石川で6月中旬ごろから7月上旬ごろにかけて、キク農家が電照用に使う電線の盗難が相次いでいる。中にある銅線が目的とみられる。JAおきなわや県花卉園芸農業協同組合によると、少なくとも6件の盗難被害が確認されている。電線自体の損害にとどまらず、電照ができずにかき入れ時の正月に出荷するキク栽培に着手できない状況となるなど影響は大きく、被害に遭った農家は悲鳴を上げている。

 被害農家やJAおきなわ、県花卉園芸農業協同組合によると、6~7月段階では電照に使用していない部分の電線の一部が切断されていた。道路に面している部分は切断されないなど、人目に付きにくい箇所の電線が盗まれているという。

 県内で銅線の買い取りをする事業者によると、銅線の買い取り価格はこの2~3年は上昇傾向にあるという。取引価格のベースとなる今年6月の国内銅建値(月平均)は、2020年6月のおよそ2倍となっている。

 7月初旬に約30メートルの電線が盗まれたキク農家の兼島兼正さん(41)は、8月から正月出荷用のキク栽培を始める予定だった平張ハウス約900坪で電照ができず、生産計画が大幅に狂っているという。「クリスマスケーキと一緒で正月に出せなければ無駄になってしまう。犯人は銅線を数万、十数万円で売れるかもしれないが、そのためにこちらは数百万の損害を受ける」と憤る。

 資材の高騰なども重なる中での被害に「ダブルパンチだ。被害を受けて廃業を考える農家が出てくる可能性だってある」と頭を抱える。

 JAおきなわの担当者によると、相次ぐ盗難を受けて防犯カメラの追加設置が迫られていることも農家の負担になっているという。

 複数の被害農家が石川署に相談しており、同署は周辺の農家から話を聞くなどして捜査を進めている。署はパトロールを強化し、周辺の農家などに注意を呼びかけている。