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【深掘り】翁長前知事の死去から5年 オール沖縄 勢力に陰り


この記事を書いた人 Avatar photo 與那嶺 松一郎
辺野古新基地建設反対を訴えるための訪米を終え、報道陣の質問に答える翁長雄志知事=2018年3月16日、那覇空港

 翁長雄志前知事が死去してから8日で5年を迎えた。米軍普天間飛行場移設に伴う辺野古新基地建設反対を一致点に翁長氏を中心に集った超党派による「オール沖縄」は、新たな政治勢力として県内政治を主導した。だが、同氏の死去とともに経済人や一部保守系政治家が離脱。玉城県政誕生後も辺野古問題解決に向けた進展は見られず、「島ぐるみ」だった往時の勢いは失いつつある。象徴を失って5年、自衛隊配備増強など新たな政治課題が生まれる中、翁長氏が作り上げた「オール沖縄」は勢力維持の瀬戸際を迎えている。

 ■保革共闘「幻想」

 「オール沖縄」勢力は2014年の知事選で翁長氏を擁立し、県政を奪取した。後継の玉城デニー氏も18、22年と自公勢力に勝利を収めた。
 知事選と同様、県内全域が一つの選挙区となる参院選は勝利する一方で、衆院選や地方選では年々、勢いが陰る。14年衆院選は県内全4選挙区で同勢力が勝利したが17年に自公が沖縄4区を奪還した。21年衆院選では、全県規模選挙として初めて総得票数が自公勢を下回り、3、4区の2議席を自公が奪った。
 現在、県内11市のうち9市を同勢力に批判的な保守系首長が占める。残る2市のうち、糸満市の當銘真栄市長は22年知事選で自公系候補を支援し、宮古島市の座喜味一幸市長は玉城県政支持を掲げるがオール沖縄色は薄い。自民県議の一人は「翁長氏が亡くなり保守層は離れた。オール沖縄と言える市長もいない。既に保革共闘は幻想だ」と指摘する。

 ■自衛隊配備、議論進まず

 22年、政府は安保3文書を改定した。対中国を念頭に南西諸島の軍備強化を推し進める動きは、辺野古問題など米軍基地集中への対応が中心だった県内政治に新たな課題を突きつけた。
 玉城知事は日米安全保障体制、自衛隊についても容認する立場をとる。だが、オール沖縄内部では自衛隊配備増強について議論が進んでいない。与党県議の一人は、辺野古問題解決のために「腹八分、六分で保革がまとまった」として「自衛隊問題は触れてこなかったし、スタンスを一致できるか難しい」と明かす。
 ジレンマは自衛隊問題だけでなく米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の浦添市移設でも同様だ。
 任期途中での衆院解散・総選挙が取りざたされ、来夏には県議選も控える。別の与党県議は「辺野古問題以上に自衛隊問題が焦点となる」と分析する。「目指すべきは腹八分、六分。互いに聞く耳を持つという翁長さんが訴えた原点にもう一度、立ち返る必要がある」と語った。

 (佐野真慈)