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全国の高校生が北海道を舞台に写真の腕を競い合う第30回写真甲子園2023本戦が、7月25~28日に開催された。応募総数は過去最多の584校、そのうち19校が本戦に進んだ。沖縄からは浦添工業が3年ぶり10回目の出場を果たし、3位相当の優秀賞を受賞した。本戦の舞台裏を紹介する。
「人を撮りたい。優しくて沖縄にいるような安心感がある」。開会式が開かれた25日夜、安里すずらさん(17)、上江洲心音(ここね)さん(17)、金城花音(かおん)さん(16)は顧問の新垣隆吾教諭を交えて2時間半話し合いった。本戦で提出する2作品はどちらも道民の暮らしや人柄を撮ろうと決めた。初回審査の作品は、被写体が持つ力強さを表現しやすいモノクロ写真で、最終審査に出す作品はぬくもりを強調できるカラー写真で作ることにした。翌日は早朝4時から撮影を開始、納得のいく写真を順調に撮りためることができた。
大会期間中の北海道は、連日真夏日。重い機材を抱えながら写真を撮り歩き、疲労が蓄積されていった。思考力が落ち、夜は何時間話しても意見がまとまらず、ささいなことで衝突した。
最終審査用の作品作りでも団結できず、パソコンの動作不良も重なって制限時間内に提出できなかった。大会ルールは「遅れた場合1分につき総合点から1ポイント減点」。3人は「体感で5~7分遅れた」と涙顔で最終審査会に出た。結果は優秀賞。「絶対優勝したい」と闘志を燃やしていた3人は、表彰式が終わるまでうつむいていた。
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「おめでとう」。会場の出口で3人に最初に駆け寄ったのは、大会運営サポーターとして駆け付けていた昨年準優勝の沖縄工業元キャプテン、平良有理佳さん(19)だった。今年4月から神戸の専門学校に通っている。カメラの技術指導の恩師が浦添工業に勤務している縁で、3人の沖縄での撮影練習にも2回同行した。「お姉ちゃんみたいな存在」の平良さんに声をかけられた3人は一気に感情が込み上げ、肩を震わせながら小さく「悔しい」「ごめんなさい」と言って涙を流した。
被写体となった家族も駆け付けていて、笑顔を向けられた3人は「ありがとう」と、何とか声を絞り出した。
上江洲さんは「出会った人はいい人たちばかりで、だからこそ優勝して感謝を伝えたかった」と、ぐしゃぐしゃになった顔を両手で覆った。
顧問の新垣教諭は「果敢に挑戦して得た自信や、協調性で自分に足りなかった部分に気付いたことなど大きな成長につながる」と奮闘をたたえた。
浦添工業の初戦、本戦の全ての作品は写真甲子園公式ホームページで閲覧できる。
(嘉数陽)