着陸時、減速足りず 粟国事故 第一航空が規定違反


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 金城 潤

 2015年8月の粟国空港での第一航空機着陸事故で主に離着陸時に減速するため主翼の空気抵抗を変える「フラップ」(高揚力装置)が当時、大阪航空局から許可を得た規定通りに操作されず、減速がしっかりなされていなかった可能性があることが31日までに調査関係者への取材で分かった。

 同社の運航規定では、粟国空港への着陸時のフラップ角度は最も減速効果のある37度と定められていたが、事故時はそれより浅い20度で滑走路に進入していた。また、着陸後、滑走路を出た後に操作するよう定められていたフラップを接地後間もなく0度に上げていた。専門家は「通常はあり得ない行為だ」と強調。浅いフラップ角度で進入し、規定より早くフラップを0度に上げたことで減速がしっかり行われていなかった可能性を指摘した。
 第一航空によると、着陸時のフラップ20度の設定は当時機長昇格訓練中の副操縦士が行ったという。同社は「運航規定では、着陸時のフラップ角度は原則37度とされているが、飛行機の重量や風速などの条件で20度にすることも認められている。事故前に20度で着陸したこともある」と話した。一方、調査関係者によると、事故時は重量、風ともに20度にすることが認められる例外には、当たらないものだったという。
 接地直後のフラップ上げは機長が行っていた。同社は「導入時に研修を受けた外国人教官から、接地後すぐにフラップを0度に上げるよう教わった。規定では滑走路を出てから上げるよう定められている」と規定違反を認めた。
 調査関係者によると、同社社員からの意見聴取では運航規定厳守の意識の低さや規定違反を指摘しづらい風土があったとの声があったという。
 事故は8月28日午前8時55分ごろ、粟国空港で、乗員乗客14人が乗る第一航空の双発プロペラ機DHC6│400型が滑走路を右に外れ、滑走路の南端から300メートルの場所でフェンスに激突し停止した。乗員乗客が軽傷を負った。事故直後、原因の可能性に挙げられていた車輪については、機体購入元のバイキングエア社に車輪や支柱などの着陸装置を送り、調査をしたところ異常がないことが分かったという。(藤村謙吾)