OIST、マラリアの構造解明 「薬開発に期待」


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 沖縄科学技術大学院大学(OIST)は14日、熱帯熱マラリアの病原体であるマラリア原虫のタンパク質の一つと、それに対して感染初期の生体防御を担う抗体分子が結合した三次元構造を解明したと発表した。OISTは「薬の開発に向けて有用な知見をもたらすことが期待される」としている。

 ウルフ・スコグランド教授が率いるOIST構造細胞生物学ユニットと、スウェーデンのカロリンスカ研究所との共同研究による成果で、15日付の米科学誌セルリポーツ電子版に掲載される。
 マラリア病原体は感染力を高めるため、感染赤血球を正常赤血球が囲み、花びら状の配列「ロゼット形成」を形作る。感染効率が高まるロゼット形成はマラリアの重篤化、高熱の発症を引き起こすという。
 ロゼット形成に重要な役割を担うのが、熱帯熱マラリア原虫赤血球膜タンパク質(PfEMP1)。PfEMP1は赤血球表面に発現し、感染初期に防御機能を果たすIgM抗体と結合する。研究員らは、感染細胞の表面に形成されたブーケ状の結合体の可視化に成功した。ブーケ体に取り込まれた抗体はほかの免疫分子(補体)と結合できず、感染細胞を攻撃できないことも分かった。
 スコグランド教授は、今回の解明によって、感染赤血球のロゼットを破壊、排除を可能にする薬物療法の開発に役立つとみている。
 国際保健機関(WHO)の世界マラリアリポートによると、世界の患者数は推計2億1400万人、死亡者数は43万8千人。