新たな魅力 披露 知名定男5年ぶりワンマンライブ


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自身のプロデュース曲をライブで披露する知名定男=16日、那覇市のライブハウス島唄

 2015年3月に本格復帰を果たした民謡歌手・知名定男の5年ぶりとなるワンマンライブ「島唄百景」が16日、那覇市のライブハウス島唄であった。ネーネーズなどのプロデューサーとしても知られる知名が自ら生み出した歌を自身で歌う「セルフカバー」でひと味違ったライブを展開した。

 知名の軽快な三線の音色が印象的な「饒辺の前」など、第1部は知名定照(琉琴)と朗々と味のある声で沸かせた。親に勘当された時、八重山の古典にほだされて作ったという「島や唄遊び」なども披露した。吉田康子と共演した「めぐり逢い」は観客の手拍子も重なった。「情念(なさき)」など、定照の琴もライブを奥深いものにする。
 第2部はバンド「DIG」を携えてのスタイル。「自分で歌ったことのない歌を」と意気込んで臨んだが、ライブ当初は照れくさそうに歌う表情が印象的だった。「ウムカジ」のほか、「何でこんな歌を作ってしまったかね」と自嘲気味に振り返る「バイバイ沖縄」もネーネーズが歌うかわいらしさとはまた違う、渋めの声がマッチしていた。
 15年に亡くなった作詞家・岡本おさみとの共作も披露した。「高度経済成長時代に必死に働いてきた人が数十年後、“窓際族”に追いやられてしまう現状があった。振り返ると大事なものを置き忘れてきたのでは」という人々への思いを込めた応援歌「山河、今は遠く」。哀愁たっぷりに歌うその姿に、同年代とみられる男性客が思わず涙をぬぐう場面も見られた。
 ネーネーズのために作った歌も、知名にとっては作品の一つ一つが自分の“子ども”のようなもの。愛情たっぷりに歌う姿が印象的だった。約20年前に生まれた曲だが、現在でも普遍的な意味を持つような歌詞の「黄金の花」では情感たっぷりに歌い上げた。
 喉の不調で一時休業していたこともあり、時折せき込み、心配させる場面もあったが、最後までライブを走りきった。新たな知名の表情、魅力を見せつけたライブだった。
(大城徹郎)