2・28事件、青山さん勝訴確定へ 台湾政府が上訴断念


社会
この記事を書いた人 志良堂 仁

 台湾の国民党政権が住民多数を殺害した1947年の「2・28事件」で日本人漁師の父を失った青山恵昭さん(72)=浦添市=に対し、台北高等行政法院(裁判所)が損害賠償600万台湾元(約2千万円)を支払うよう台湾政府に命じた判決に関し、台湾政府は24日、上訴しないことを決めた。事件の真相究明や賠償などに関して政府の委託を受けた財団法人「228事件紀念基金会」が同日、臨時の理事会で多数決で決定した。台湾政府が25日に上訴しないことを裁判所に伝え、青山さんの勝訴が確定する。同事件で外国人への賠償が認められるのは初めて。

 台湾政府は、元日本兵の台湾人や台湾人元慰安婦に対する日本政府の補償が不十分であることなどを理由に、原告の青山さんの訴えを退けるよう裁判で主張していたが、台北高等行政法院は18日、青山さんの父、恵先さんを事件の失踪者と認めた以上、政府は賠償に応じるべきだと命じた。
 基金会は、戦争中の慰安婦などに対する補償に日本政府が応じていないとして、一部理事が上訴断念に反対したことなどを受け、日本政府に慰安婦などへの賠償を求めていくという。
 同事件では青山さんのほか県人3人の被害が調査で判明しており、判決でも青山さんの被害認定と同列に扱っている。3人の遺族は基金会へ補償申請する準備を進めており、台湾側の対応が注目される。
 青山さんは「完全勝利だ。ほかの3人も続くので、対応を期待したい」と話した。
 「台湾2・28事件真実を求める沖縄の会」顧問の又吉盛清沖縄大客員教授は「台湾の民主化が成熟したことが背景にある。台湾の民衆自身が戦後処理を受け止めるという基盤があって、上訴しないという判断が出た。お金の問題ではない。正義や人権という観点から、台湾の評価は高まるだろう」と話した。