【与那国】与那国町は9日、国民保護法に基づく武力攻撃事態を想定した「避難実施要領」を策定するため、避難方法に関する住民説明会を比川多目的集会施設で開いた。住民約30人が参加。住民からは「島から避難したくない」との意見や、島に残った後の生活保障のあり方、避難に強制力があるのかなどの疑問が噴出した。国の担当者や糸数健一町長が不在であることへの不満の声もあった。
町の担当者が船舶や航空機で島外避難する計画を示すと、頭を抱えたり、資料を凝視して眉間にしわを寄せたりする住民の姿があった。「戦争がある前提なのか」「家も捨て、畑も捨て、墓も捨て、島を出るには『納得』が必要だ。それが全くない」と疑問をあらわにし、「避難しない」との意見も多く上がった。
九州への避難方法の説明直後、最前列に座っていた後間(こしま)正輝さん(75)が割って入った。「そんなことあり得る話なのか」。後間さんは質疑応答で避難計画に納得できないと怒りをぶつけた。「(そもそも)日本は戦争ができる国なのか。なぜ与那国の人が島を出ていかないといけないのか。俺は行かない」。別の男性も続いた。「私は避難しない。島に残る」。島外避難に否定的な意見が相次ぎ、町担当者は「この避難計画は本当は実施したくない」「万が一のために」作成していると苦しい胸中を吐露した。
別の男性は「住民の生き死にに関わる大事な問題だ。なぜ内閣府の担当者を呼ばないのか」とただした。東浜(ありはま)妃敏(ひとし)さん(63)は立ち上がり「町民の命がかかってるのに、なぜ町長がいないのか」と追及。譜久嶺弘幸副町長がうつむき気味に「諸事情で」と答えるにとどまった。
このほか、住民からの「避難は強制か」との質問に、町担当者は「国民保護法で法的義務は生じるが、強制力はない」と答えた。「避難せず島に残った住民の生活保障を国がしっかり示すべきではないか」との問いには、「確認して(後日)報告したい」と述べた。島内のガマに避難するとの意見もあり、担当者はガマへの避難が可能か国の関係者にも「ガマを見てもらった」と明かした。
陸上自衛隊与那国駐屯地の鵜川優一郎司令も「住民の意見を聞きたい」と、住民側の席に座って参加した。住民から自衛隊に対する厳しい意見がいくつか出たことを受け、鵜川司令は「住民を守らないというのは一切ない」などと述べた。
(照屋大哲)