保護児童の母 車で生活 石垣、母子施設なく 離島支援充実訴え


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テレビを見て過ごす児童養護施設「ならさ」の男児=石垣市内

 母子家庭の子育てや生活の自立を支援する「母子生活支援施設」が整備されていない離島で、児童養護施設に子どもを預け、母親が生活困窮したまま生活している事例が出ている。石垣市では、家賃が払えなくなり、児童養護施設「ならさ」に子どもを預けた母親が、ホームレス生活を強いられている。同施設の翁長克子理事長や田盛広三施設長は「母子が分離され、子どもにとってもつらい環境だ」と話し、母子生活支援施設の早期整備を求めている。

 「ならさ」によると、母親は定職に就いているものの、親の借金などで家賃が払えなくなり、アパートから追い出された。生活保護を申請したが、条件面で保護が受けられなかったため、臨時措置で子どもだけ施設に預けられた。
 母子生活支援施設があれば、母と子が一緒に住んで生活再建の支援ができる。しかし、石垣島には母子生活支援施設がなく、母親はアパートを追い出された後も十分な支援が受けられないまま車で寝泊まりしているという。
 同施設の砂川忠寛養護課長は「小さな子どもにとって、親と離れて暮らすのは大変なこと。本島の施設に行こうにも、親の介護など、ここの生活があって離れるのが難しい人もいる」と述べ、地元にいながら支援できる施設の必要性を訴えた。
 翁長理事長は「この母親と同じような事例は少なくない。別の家庭から相談を受けているが『助けられるのは子どもだけだ』と説明している。母親を救えないのは苦しい。母子生活支援施設は離島こそ必要な施設だ」と話した。
 また、児童養護施設では、中学生までは塾代や部活にかかる費用は全額賄えるが、高校生からは月額約2万3千円の特別育成費の枠内で支出しないといけないため、十分な支援ができていないという。
 田盛施設長は「離島は部活の県大会でも旅費が発生するので、支援金は全然足りない。枠内で収まり切らない分は他の予算から充当するので、子どもたち全体にしわ寄せが行ってしまう」と離島特有の厳しさを説明し、中学生と同等の支援を求めた。
(稲福政俊)

<用語>母子生活支援施設
 児童福祉法で定められた施設で、県内には那覇市、浦添市、沖縄市の3カ所にある。家庭内暴力や経済的困窮で子どもの養育が困難になった母子家庭が入所対象。何らかの事情で離婚届が出せない母子も入所できる。入所者は、独立した居室で家事、育児をこなしながら、子育てや生活再建の支援を受けられる。利用料は世帯所得に応じて決まる。