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【宮里藍さんインタビュー】「あの人みたいになりたいではなくて、自分にしかなれない誰かになってほしい」 ジュニア選手への期待、沖縄への思い


【宮里藍さんインタビュー】「あの人みたいになりたいではなくて、自分にしかなれない誰かになってほしい」 ジュニア選手への期待、沖縄への思い ゴルフ場をバックに撮影に応じる宮里藍さん=11日、恩納村冨着のPGMゴルフリゾート沖縄(渡真利優人撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 屋嘉部 長将

女子ジュニアゴルファーの成長をサポートする大会を沖縄初開催する宮里藍さん(39)に、自身の経験や沖縄への思い、ゴルフで世界を目指す選手たちへのメッセージを聞いた。(聞き手・屋嘉部長将)

 「引退してから半年ぐらいして後にふわっと『育成になにかしたいな』という気持ちが出てきた。その気持ちを大事にしようと思い、この大会を立ち上げた。スポンサーさんであるサントリーレディスオープンの試合などで活動している。あとは本当に育児が大変です(笑)」

サントリーレディスゴルフ ティーショットを放ち、球の行方を見詰める宮里藍さん=2017年6月、六甲国際ゴルフ倶楽部

「伸びしろ」ある時期の選手に知ってほしいこと

 ージュニアの大会を立ち上げた経緯や目的は。

 「ゴルフはメンタル競技と言われるが、メンタルトレーニングをどこで、どうやって習えばいいのかと言われても場所がすごい少ない。日本ではあまりないかもしれない。そういったことを(私が)海外で経験して、若い選手に少しでも『メンタルトレーニングってこんな感じだよ』と視点を持てるような大会をつくりたいなと思い、この大会を立ち上げた。メンタルトレーニングといっても『ビジョン54』の基本的な部分をとにかく触れてもらいたいというのが一番の思いだ」

 「私が中学から高校の間、ものすごい、いろいろなことを経験でき、ぐっとプロに近づける期間だった。やっぱりこの伸びしろがある期間の選手に違った視点というのをちょっと持たせてあげることがすごく重要だと思う。今大会、『ビジョン54』の講習会を参加してもらった上で、どういう風に自分のゴルフを感じるか、改めて自分をちょっと立ち返る機会になってくれたらいい」

1998年4月の全琉アマチュアゴルフ選手権で優勝した宮里藍さん

ゴルフ哲学「ビジョン54」とは?

 ー宮里さんも学んだゴルフ哲学の「ビジョン54」とは。

 「(提唱者は)18のホール全てバーディーという可能性を信じ、誰かが達成してくれると期待している。それが不可能ではなく、可能性は無限だというのが基本的なメソッドだ」

 「もっと具体的な話をすると、自分自身と向き合うツール、スキルを勉強させてもらう感じだ。とにかく質問が多く、教えるというよりはすごく話す。コース戦略など直接的な感じではないか、自分がどういった選手になりたいかというのを具体的にイメージしやすい質問を投げかけられたらいいなと思っている」

 「その辺は私も意識しながらやっている部分でまだまだ勉強段階だ。コミュニケーションを取っていくと選手自身も自分が考えていることを認識できるので、そこは大きいかなと思う」

 ーこれまで4回女子ジュニアの大会を主催してきた。ジュニア選手の印象は。

 「この大会で出会う段階でみんなすごくうまい。この大会出たからというよりも、なるべしくしてプロになっている選手もいる。1回目の大会に出てくれた選手がツアーに参加している。力がついている選手が多いなという印象だ」

 「上に行けば行くほど、自分の考え方や求めていることで、自分の持っているスペースがどんどん狭まっていく。できるだけそれを広げてあげて、自分自身が何者かという輪郭をしっかり持ち続けるのがモチベーションを保つ上では大事になってくる。それをどうやってやるのかを、その基礎を大会で伝えて行きたい」

琉球新報社のインタビューに応じる宮里藍さん=11日、恩納村冨着のPGMゴルフリゾート沖縄(渡真利優人撮影)

東村、沖縄 「ホームがある」大切さ 

 ー5回目の大会は地元沖縄での開催だ。

 「沖縄で開催したいという思いは第1回からずっとあったが、途中でコロナ禍が重なってしまった。ようやく5年目にして開催できて、私自身、本当に満を持してという感じですごく楽しみにしていた」

 ー今大会のコースセッティングについて。

 「今回がコースとしては最長になる。いろいろ決めるときに迷いもあったが、沖縄の風の難しさも踏まえて、長くした部分もある。今は女子もパワーゲームになってきて、飛距離もどんどん伸びてきている。長い距離にもちょっと対応してもらいたいという思いもある。今年はちょっと難しいと思う」

 ー出身地の東村、沖縄はどんな存在か。

 「東村も沖縄もやはり帰ってくる場所というのはずっと変わらない。自分の中でホームがあるというのはすごく大事だなと思う。宮里美香ちゃんなど仲良くしている選手も沖縄に帰ってくるという意味の重要さは共通してある気がする。エネルギーをもらえたり、自分のペースで自分のことができたり、周りの人と話せたりする。そういったことが自分にとってすごくプラスになる場所なので、自分自身を思い出させてくれるホームだ。帰れるのならもっと帰りたいが、なかなかできない。できるならいつでも帰りたい」

地元・沖縄の話題に笑みがこぼれる宮里藍さん=11日、恩納村冨着のPGMゴルフリゾート沖縄(渡真利優人撮影)

自分の内側から出るメッセージと向き合って

 ー県内からプロ、世界を目指すジュニアの選手たちへメッセージを。

 「情報化社会で自分が見たいものや選択したいものはいっぱいあると思うが、周囲から得る情報だけではなく、自分の内側から出るメッセージがすごく大切だ。どうしてプロになりたいのか、どうしてゴルフをしているのかという根っこの部分というのを強く持ってほしい」

 「誰にもなれない誰かになってほしい。あの人みたいになりたいではなくて、自分にしかなれない誰かになってほしい。私自身はビジョン54を通じて宮里藍にしかできないゴルフを自信を持ってやっていたつもりだ。その自分自身をちゃんと認識するという作業が引退してもすごく大事だ。競技生活よりも残りの人生の方がうんと長い。そういった意味では、ゴルフを通じて自分自身をしっかり発信していく力がもすごく重要だと感じている。そこは若い選手にも頑張ってほしい」