対馬丸碑 建立へ 宇検村議会が予算承認 年度内にも


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 沖縄戦で米軍に撃沈された疎開船「対馬丸」の犠牲者が多くたどり着いた鹿児島県奄美大島・宇検村の村議会(喜島孝行議長)は27日、同村が2016年度補正予算として9月定例会に計上した「対馬丸慰霊碑建立補助金」の610万円を承認した。建立費の承認に、宇検集落の区長で対馬丸慰霊碑建立実行委員会委員長の川渕昌春さん(64)は「年度内にも完成させたい。亡くなられた方のみ霊を祭り、平和の大切さを伝える場にしたい」と喜んだ。

 同建立費用は15年度3月定例会、16年度6月定例会と2度にわたり否決された経緯がある。8月の議員改選を経て、村は建立費補助金の見直しを図り9月定例会に再度、計上していた。

 対馬丸記念会理事長の高良政勝さん(76)は「宇検の皆さんに感謝したい。多くの沖縄県民にも知ってもらいたい」と話す。慰霊碑は、沈没海域に近い悪石島にもある。しかし、多くの犠牲者や生存者が流れ着いた奄美大島にはなかった。高良さんは「遺族や助かった人たちから、奄美のどこで手を合わせたらいいか分からないという声があった。慰霊碑ができることにほっとしている」と話した。

 宇検集落は15年初め、慰霊碑建立を村に要請。村は対馬丸慰霊碑建立実行委員会を立ち上げ、16年度予算に建立、周辺整備費用1050万円を計上した。しかし、財政難などを理由に村議会が建立に反対し、予算案は項目維持のための千円に修正した。その後、宇検集落に建立実行委員会を移し、村は建立費用の補助金650万円を6月議会に計上したが、賛成少数で否決されていた。