「忘れない」花手向け続け 再発防止 政治に問う 米軍属女性暴行殺人


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献花台に手向けられた花を花瓶に移すためにより分ける吉田勝広さん=15日午前6時半すぎ、恩納村安富祖

 【恩納】米軍属女性暴行殺人事件で、被害者の女性が発見された恩納村安富祖の現場では事件から半年が経過した現在も、花や飲み物などが手向けられている。週に一度現場を訪れ手を合わせたり、献花台に手向けられた花や飲み物などを整理したりしている人がいる。元金武町長で前県議の吉田勝広さん(71)だ。「事件が重ねられると、なぜ起きたかを含め忘却のかなたに消える。一つ一つの事件を忘れてはならない」。沖縄から米軍の事件事故がなくなるように。祈るような思いで足を運び続けている。

 現場は県道104号付近。よく利用する道で遺体が見つかった5月19日も通り掛かり、捜査関係車両が止まっているのを見た。「彼女が見つかったのだと思った。やり切れなかった」。当初は毎日、現場を訪れ手を合わせた。

 吉田さんは15日午前6時半ごろ、近所から分けてもらったハイビスカスの花を手に献花台の前に立った。供えられたミネラルウオーターのペットボトルからコップに水を注いだ。「皆さんの思いがより長く現場にいられるように。簡単には捨てられない」。台風接近前には手向けられたペットボトルをクーラーボックスに入れ、守った。「一人一人の思いが支えているから」

 遺族と面識はない。「遺族がどう思っているかは分からない。現場に来なければという自分の思いだ」

 金武町長や県議会議員として在職中も米兵による事件事故が繰り返された。事件事故をなくすには「海兵隊を整理縮小し最終的になくすことだ」と話す。その思いから名護市辺野古や東村高江に足を運び基地建設の抗議行動に参加する。献花台で被害者の女性に、現場で起こっていることを報告することもある。

 「二度とあってはならない、とは言いたくない。もうずっと繰り返されているから」。悲しむ遺族の姿も何度も見てきた。「遺族は一生悲しむ。政治をつかさどる者が、本当に寄り添うことができているか。事件が起きないようにするにはどうするべきなのか。常に問われている」
 (宮城久緒)