【追跡・オスプレイつり下げ訓練】 なんのための住宅標識灯


この記事を書いた人 金城 美智子
物資をつり下げながら飛行するオスプレイ=8日午後9時5分ごろ、宜野座村城原区付近上空

■迫る恐怖 昼夜なく

 宜野座村城原区に隣接する米軍キャンプ・ハンセンで連日、オスプレイによる物資のつり下げ訓練や離着陸訓練が繰り返されている。6、7の両日、民間区域でのつり下げ訓練が確認されたが、米側は「提供施設内だ」と主張し、今後も続ける方針だ。事故の不安や騒音被害などを受け、住民からは城原区の集落に近いヘリパッド、通称「ファルコン」の使用禁止を求める声も上がる。

 6日は午前中から“ファルコン”などで離着陸訓練が行われ、騒音への苦情が区公民館に寄せられた。崎浜秀正区長は「朝からの訓練はよくあるが、苦情電話はまれだ。それほどうるさかった」と振り返った。
 6日の訓練は夜まで続いた。崎浜区長が手にした懐中電灯の光は、オスプレイの離着陸で空気中に巻き上げられた粉じんを照らした。粉じんは空気が乾燥すると、周辺の車に積もる。崎浜区長は「洗濯物も汚すだけでなく、目や喉も痛める」と表情をゆがませた。

 ファルコンからわずか約300メートルの距離に住む泉忠信さん(86)によると、オスプレイは日常的に泉さん宅上空を飛行している。泉さんは常に2階の電気を付けるようにしていた。「昼夜問わず目の前を飛ぶオスプレイが家にぶつからないようにするためだ」

10月下旬に泉忠信さんの自宅の近くに設置された「航空標識灯」(右)=11月23日、宜野座村城原区

■住民、訓練増加を懸念

 泉さんの再三の要望を受け、今年10月下旬、沖縄防衛局は泉さん宅付近に米軍機のパイロットに住宅を知らせる標識灯を設置した。だが、設置以降も泉さん宅上空での訓練は繰り返された。泉さんは「飛行ルートにならないための標識灯なのに、効果がまるで無い」と怒りをあらわにした。崎浜区長は今年3回、直接沖縄防衛局に行き、米軍ヘリの低空飛行と騒音被害に抗議している。だが訓練がなくなることはない。

 住民からはファルコンを使用しないよう求める声が高まっている。城原区行政委員の雨宮節(たかし)さん(80)は「ヘリパッドは宜野座村内に20カ所以上あるのに、なぜわざわざ民間地に近い場所を使うのか」と憤る。
 現在、米軍北部訓練場のヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)と米軍伊江島補助飛行場内で強襲揚陸艦の甲板を模した着陸帯の建設作業が進み、名護市辺野古の新基地建設も計画されている。三つの施設が完成すればオスプレイの飛行訓練が北部地域に集中し、さらに訓練の頻度が増すとの懸念が住民から上がる。

 崎浜区長は「今あるだけでこれだけの被害がある。辺野古に基地ができると海側の訓練だけが増えるという声もあるが違う。訓練は連動しているので、こちらでの訓練も増えるのは目に見えている」と指摘。泉さんは「(米軍北部訓練場に)新たなヘリパッドは絶対に造ってほしくない」と力を込めた。(友寄開)