60年ぶりに伝統帆船復活 名護湾に浮かぶ


社会
この記事を書いた人 松永 勝利
進水式で帆かけサバニ「遥龍」を前に笑顔を浮かべる関係者ら=2日午前、名護市21世紀の森ビーチ

 【名護】名護市内で約60年ぶりに造られた沖縄の伝統木造帆船の帆かけサバニ「遙龍(はる)」の進水式が2日午前、名護市21世紀の森ビーチで行われ、駆け付けた多くの関係者らが完成を喜んだ。遥龍が名護湾の海面を進み始めると、大きな拍手が沸き起こり、新たなサバニの誕生を全員で祝福した。

 同船は佐藤道明さん(51)=神奈川県、経営者=の依頼を受け、造船技術の向上と継承に努める団体「フーカキサバニ」が中心となって造った。製造期間は3カ月で、船の全長は7・5メートルになる。

 佐藤さんは知り合いのフーカキサバニの森洋治代表から以前に「名護湾に帆かけサバニを浮かべたいが、技術を継承する人が年々減っている」と聞かされた。

名護湾を軽快に移動する沖縄の伝統木造帆船の帆かけサバニ「遙龍(はる)」=2日午前、名護市21世紀の森ビーチ

 このため佐藤さんは「若い造船者に私の船を造ってほしい」と思うようになり、遥龍の造船を依頼したという。

 進水式で遥龍が海面に浮かぶ様子を見ながら佐藤さんは「きょうの日を迎えることができて幸せだ。関係者に感謝している」と満面の笑みを浮かべた。

 佐藤さんは「多くの子どもたちに乗ってほしい。授業で利用してくれたら、こんなにうれしいことはない」と語った。

 遥龍の造船を手掛けた長嶺誠さん(36)は「帆かけサバニはくぎを使わず、安定性よりも速さを重視した船だ。できあがった遥龍は海上をスムーズに移動していたので(仕上がりは)良い感じだ」とうれしそうに話した。

 同船は名護中央公園が所有する休耕中の田んぼの敷地で造られた。製造過程は一般に公開され、子どもたちもサバニ造りに関わった。市文化財保存調査委員会の岸本林委員長は「サバニの製造過程を公開することは珍しい。文化の継承のために大切だ」と話した。【琉球新報電子版】