変わらぬ基地集中 福祉、環境にひずみも 復帰45年


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<解説>
 沖縄が日本に復帰して15日で45年がたった。社会基盤の整備は大幅に進んだが、住民が解消を望んだ米軍基地の集中度は復帰直後の75%から70%に減るにとどまり、整理・縮小は進んでいない。それどころか新たに自衛隊基地が面積で4倍に増え、さらにミサイル基地まで造られようとしている。政府が辺野古新基地建設を強行したり、米軍が日米合意に反して過去に例がない降下訓練を実施したりするなど、45年を経た現在は逆に沖縄への基地機能強化が際立って映る。

 一方で沖縄への基地の集中が軍事的理由ではなく政治的理由であることがこの間に周知となった。1996年のSACO(日米特別行動委員会)合意の基地の整理はほとんどが県内移設とされた。だが、そもそも沖縄に基地を押し込めようとする施策に「差別」だとしてノーを掲げる声も高まってきた。翁長雄志知事が基地は経済発展の「最大の阻害要因」と指摘するように価値観の転換も浸透してきている。

 インフラ整備の推進とは裏腹に景観も大きく様変わりした。地域の経済を支えた共同売店が姿を消していく。マチヤグヮーもめっきり減った。全国共通の看板が通りにあふれる。「沖縄らしさ」が消えたとの指摘も少なくない。

 復帰時に策定された第1次沖縄振興開発計画には、その目標として「本土格差の是正」と「自律的発展の基礎条件の整備」が掲げられていた。そのため社会基盤整備のハード事業が重点的に施され、子どもや高齢者の福祉施策がなおざりにされてきた側面も否めない。

 環境破壊などのひずみも重なった。沖縄の特性を生かした持続可能な県土利用ができてきたか、疑問は拭えない。復帰50年とそれ以後を見据えた今後の振興をどうしていくかを考える上で、今の振興の在り方を改めて見直す必要もある。(滝本匠)