中国、沖縄県産モズクに熱視線 健康意識向上で需要増


この記事を書いた人 Avatar photo 瀬底 正志郎

 中国から沖縄県産モズクへの注目が高まっている。中国人の健康に対する意識の向上や、これまで中国国内で高級海鮮食品として取引されてきたナマコなどの販売競争が厳しくなってきたため、新商品開拓の一環として中国国内でほとんど流通していない県産モズクの需要が増えている。しかし、県内の供給体制が整っておらず、中国企業の買い付けを断る例も出ている。供給体制の強化などが巨大な中国市場進出への鍵を握りそうだ。

 日本と中国業者間のビジネスを仲介するTBLコーポレーション(大阪市)の朴聖杰(ぼくせいけつ)常務によると、中国東北部・山東省で海産物輸入・販売・加工などを手掛ける大手の威海青正食品(姚如海社長)は、今年3月ごろTBL社を通して県内複数の商社と約40トンのモズク輸出を交渉した。しかし、いずれも最多で2~3トンしか供給できないため注文を断った。

 中国へ水産食品を輸出する際には、中国当局の認可が必要となるが、県内で認可を得ている企業は二十数社にとどまる。モズクの扱いがなく、量を確保できない商社もあり、中国へ輸出を拡大する上でのハードルとなっている。朴常務は「沖縄から中国へモズクの直接輸出ルートをつくりたいが、提携業者が見つからず、事業はなかなか進まない」と語る。

 一方、輸出拡大に向けては生産量の伸び悩みが続いていることも大きな足かせとなっている。県内最大のモズク産地・勝連漁業協同組合の上原勇行組合長は「既存の取引先の要望も満たせておらず、取引先の拡大は難しい」と語る。

 県内のモズク生産量は2015、16年と2年連続で1万3千~1万4千トン台となり、目標を下回る不作が続いている。今年の生産量も「昨年並みとなれば上出来」という状況だ。

 本土市場ではモズクの健康への効果が知られるようになったことや、酢の物にしていないモズクの流通が進み、汁物や卵焼きなど料理のレパートリーが増えたことから需要が伸びている。輸出は“二の次”の状況だ。漁協にも度々中国企業が訪ねてくるが、巨大市場からの要望として「中国の需要は、勝連で採れるモズク(約7千トン)が全て欲しいというレベル」(上原組合長)で対応は難しい。上原組合長は「既にモズクが成育できる場所には目いっぱい植え付けている。(輸出拡大の)機会損失はあるが、品物がない」と語った。

 琉球大学観光産業科学部の知念肇教授は「中間所得層が増える中国市場への販売はオール沖縄で取り組む必要がある」と話し、養殖場の拡大など離島も含めた供給強化の必要性を指摘した。