積極性「壁」減らす OIST仲間さん 聴覚障がいから逃げず


この記事を書いた人 琉球新報社
職場の休憩中に同僚に手話を教えるなどしてコミュニケーションを取る仲間正人さん(左から2人目)ら=恩納村の沖縄科学技術大学院大学

 【恩納】沖縄科学技術大学院大学(OIST)の法令セクションで学内の決裁処理や文書、公印の管理を担当している仲間正人さん(39)=宜野座村=は生まれつきの聴覚障がい者だ。あらゆる職場で事務連絡は電子メールに頼りがちになる中、仲間さんが心掛けていることは「直接会って伝えること」。障がいの壁を乗り越えるため努力してきた仲間さんは、日常業務でも常に人間関係やコミュニケーションに「壁」が生じないよう心配りをしている。

 職員同士の業務連絡の際は職員と直接やり取りする機会を増やし、自分の考えを伝えるようにしている。やり取りなどで少しでも“壁”を感じたら、そこから逃げるのではなく、正面から向き合う。

 こうした姿勢は子どもの頃に培われた。現在のような幹線道路が整備されていなかった1980年代、宜野湾市の自宅から母親が運転する車で往復数時間かけて那覇市にあった県立沖縄ろう学校に通った。

 学校では話し手の口の動きを読んだり、発音器官を使った発音練習などを含む口話法を学んだ。「学校で学んだ口話法は自分にとって一番大きな宝物だ」と話す。

 小学校から高校までは普通校に通い、大学は筑波技術短期大学建築工学学科に入学した。卒業後は東京と長野、福岡などの建築会社で建築設計の仕事に携わり、2007年に沖縄に戻ってきた。

 健常者の中で積極的に働いてきた経験を買われ、10年にOISTに採用された。温かい人柄や他部署とも積極的に関わりを持つ積極性が評価され、OISTでは学内で働く障がい者の相談員に任命された。障がいのある職員から頼りにされているといい、悩みを聞いたり、アドバイスをしたりしている。

 また、昼休みなどの時間を利用して同僚に手話を教えるなど、交流を通して自分自身の理解をしてもらえる努力も欠かさない。

 仲間さんはこれまでの人生を振り返りながら「本当は自分自身のことを障がい者扱いしてほしくない。健常者に負けないくらい努力し、挑戦する毎日を過ごしている」と話す。

 「障がいがある人もない人も一緒に働ける社会にするために積極的に行動していきたい」と仲間さんは語った。
(友寄開)