【解説】横たわる「名ばかり正社員」 雇用の“質”改善を〈沖縄・子どもの貧困調査〉


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 2016年度沖縄子どもの貧困実態調査事業の報告書で、困窮世帯の父親の半数が「正社員」だったことが明らかになった。識者は「名ばかり正社員」とでもいうべき雇用条件も整わない企業があることを指摘する。

 全国的には子どもの年齢とともに親も経験を重ね、年収は上昇する。だが県内では年齢が上がっても所得は変わらず、子どもが成長するほど支出が増え家計の苦しさは増していた。

 一方、親の学歴と経済状況の関係では、学歴が上がるほど困窮世帯が減った。無料塾や奨学金といった進学支援が困窮世帯の減少に役立つとみられるが、短大・高専の1~2割、大学・大学院卒でも1割は困窮世帯だった。

 この人たちの背景はさらなる分析が必要だが、進学が必ずしも安定を担保するわけではないことを示している。

 沖縄は今、景気が良く失業率も改善している。しかし就業人数ではなく雇用の質が上がらなければ働く人たちの状況は改善しない。教育を受けてもそれを生かす雇用の場がなければ、生活の安定にも教育への動機付けにもつながらない。

 安心して働き生活できる所得を保障する労働環境の必要性が改めて浮き彫りになった。全国に先駆けた先進的な調査の結果を生かすために、雇用改善に切り込む施策が求められる。(黒田華)