子ども支援 フィリピンで何ができる? 全盲の石田さん、中部農で授業


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 石田由香理さん

 【うるま】中部農林高校(うるま市)は6月21日、子ども支援の国際団体「フリー・ザ・チルドレン・ジャパン(FTCJ)」で働く全盲の石田由香理さん(27)を招き、特別授業「プロジェクトを考えようフィリピンで何ができる」を行った。福祉科の3年生37人が、国際的な福祉の支援事業や途上国の福祉の現状を学び、進路について視野を広げた。石田さんは「支援に関わる中で、その人たちが『自分が必要とされている』『ここに生きていていいんだ』と思えるような活動をしていきたい」と目を輝かせた。

 石田さんは網膜芽細胞腫で1歳3カ月のときに全盲になった。小中学校は自宅の大阪に近い和歌山の特別支援学校に通い、努力の末、東京の筑波大学付属視覚特別支援学校に進学した。

 大学進学を申し出た際、両親は障がい者に対する世間の偏見の根深さを理由に強い口調で反対した。しかし、高校の恩師や点訳ボランティアの熱いサポートもあり、国際基督教大に合格。その頃から「将来やりたいことがあってもかなわない人の可能性に寄り添いたい」と、途上国の子どもたちへの教育支援を意識するようになったという。

視覚障がい者の社会参加のために何ができるか話し合う中部農林高校福祉課の生徒ら=6月21日、うるま市田場の中部農林高校

 フィリピンで働くきっかけは、大学1年の春休みに参加したFTCJによるフィリピンスタディーツアーだった。英語で会話する石田さんに驚いた現地のNGO職員が「目が見えないのにどんな教育を受けてきたのか。君のバックグラウンドに興味がある」と多くの質問をぶつけてきた。

 石田さんは「親から『お前さえいなければ』と言われた存在だが、ここでなら何かできるのではと思うようになった」と振り返る。

 大学の余暇や留学制度を利用し、足しげくフィリピンに通う。障がい者が「存在すらないものとされている」(石田さん)フィリピンの現状を学んだ。

 現在、FTCJでフィリピン障がい者支援事業のプロジェクトマネジャーを務める。フィリピン国立盲学校で、子どもたちが学びやすいように施設の環境整備に取り組んでいる。

 石田さんの話を聞いた玉城愛美さん(17)は「フィリピンの現状に驚いた。全盲の方でも自立した生活を送っていて、すごいと思った」と話した。

 徳比嘉大地さん(18)は「将来は国際協力機構などで人助けをしたい。海外でも障がいがある人が支援を受けられるようにしたい」と目を輝かせた。