「ヒアリ対策など展開」 OIST美ら森報告会


この記事を書いた人 平良 正
県内のヒアリ対策の土台となった「OKEON美ら森プロジェクト」を報告するシンポジウム2017=29日、恩納村の沖縄科学技術大学院大学

 沖縄本島の自然環境を網羅的・継続的に観測する、沖縄科学技術大学院大学(OIST)「OKEON美ら森プロジェクト」を報告するシンポジウム2017「環境教育×モニタリング研究」が29日、恩納村のOISTで開かれた。地域に密着して構築してきたプロジェクトが土台となり、全国に先駆けるヒアリ対策を展開できたことが改めて確認された。

 「OKEON美ら森プロジェクト」は、地域ネットワークを構築して本島内24調査地に気象観測装置、昆虫捕獲器、カメラや録音装置を備えてデータを収集。地理情報システムと関連させて沖縄の自然の現状を把握し、未来の地域づくりを考える。

 シンポジウムでは、プロジェクト統括者のエコノモ・エヴァンさんらが、ヒアリの侵入など環境の変化を知るためにも現在の環境を記録する重要性を指摘した。コーディネーターの吉村正志さんは「地域ネットワークがあってこそプロジェクトが機能し、県内でいち早くヒアリの不在を確認できた」と強調した。

 基調講演には、ヒアリ侵入が最初に発見された兵庫県にある「兵庫県立人と自然の博物館」主任研究員の橋本佳明さんがこの間の対応を報告した。

 同博物館では発見直後から、アリの判別のほか一般向けにヒアリの見分け方などの情報を発信、地元自治体との協力や国の対策会議への参加など「思索し、行動し、提言する博物館」とのポリシーを具現化する活動を展開。橋本さんは「博物館として高度な研究をしていたからこそ、ヒアリ対策の提言・行動ができた」と話し「各地の博物館が充実したらヒアリも怖くない」と役割を強調した。

 プロジェクトに協力する沖縄市立郷土博物館や辺土名高、読谷高の生徒らが地元のアリなどの研究事例を報告。地域の自然を見る「目」が各地に育ち、連携が広がっていることを印象付けた。
 これらの情報を発信に向け、琉球新報の黒田華記者が新聞の活用法を話した。