沖縄本島北部のやんばる地域で、野生化した犬(ノイヌ)が少なくとも62匹、野生化した猫(ノネコ)が少なくとも47匹生息していることが県の調査で分かった。調査では、ノネコが絶滅寸前のやんばる固有種、オキナワトゲネズミを捕食していたことも明らかになった。今年秋には世界自然遺産登録を見据えた国際自然保護連合(IUCN)の現地視察が予定されており、ノイヌやノネコが希少動物を襲う問題は、県が目指す世界自然遺産登録への足かせとなりそうだ。
県はノイヌとノネコの生息数や行動範囲を把握するため2016年度、国頭、大宜味、東のやんばる3村の森林地帯にセンサーカメラを設置し調査した。自動撮影したデータを中心に県が報告書をまとめた。
国頭村内で発見されたノネコのふんから、環境省レッドリストで最も絶滅の危険度が高い「絶滅危惧IA類」に指定されており、国頭村の限られた森林にしか生息していないオキナワトゲネズミの毛が検出された。琉球列島のほ乳類の保全を中心に研究している宮崎大の城ヶ原貴通研究員は「オキナワトゲネズミは日本で最も絶滅に近いネズミの1種。ノイヌやノネコをそのまま放置せず、外来ほ乳類を排除する策を最優先にとるべきだ」と警鐘を鳴らした。
自動撮影された画像や動画から、ノイヌが国頭村内を西から東まで広範囲に移動していることや、子犬や出産直後のノイヌが複数いることも明らかになった。
調査に関わったNPO法人どうぶつたちの病院沖縄の金城道男副理事長は「ノイヌが群れで広範囲に移動してヤンバルクイナなどの希少種を餌として捕食すると、希少種の動物たちは一気にいなくなってしまう」と指摘した。(阪口彩子)