沖縄シークヮーサー、安定供給へ果汁保存 通年販売も可能に


この記事を書いた人 Avatar photo 大城 誠二

 沖縄シークヮーサーの消費拡大を目指し、JAおきなわが果汁在庫を数年分程度保管し、加工原料として安定供給する体制を整えている。季節限定で販売していたシークヮーサー果汁入り飲料が年間通して販売可能になるなど、全国的な市場展開にも動きが出ている。急激な需要増加や、台風被害などによる品不足で取引先に供給できなくなる事態を避けることで、取引先から信頼される農産物ブランドの確立を目指す。

 JAおきなわの2014年の加工用シークヮーサー取り扱い実績は1748トンで、県内生産量の半分を占める。従来は、その年に搾ったシークヮーサー果汁はその年で販売してきた。しかし、シークヮーサー生産量は気候の影響で年によって増減幅が大きく、過多となる年もあれば台風の襲来で原材料不足となり、従来取引していた業者への出荷を断らざるを得ない事態になったこともある。

 沖縄農業につきまとう安定生産面の懸念が、果汁を加工原料として販売する上での課題となっていた。

 また、テレビ報道をきっかけとしたブームも度々発生し、高値で買い付けるブローカーが台頭する事態にも発展した。需要に生産が追いつかず、台湾産が流入する一因にもなった。

 市場への安定供給を図る観点からJAおきなわは13年に、冷凍保存中も果汁の品質が劣化しないことを確認した上で、5年を上限に冷凍保存する方針に切り替えた。JAが冷凍品を長期保存しているのはシークヮーサー果汁だけだ。担当者は「取引が一度断たれると信頼は大幅に落ち、取引を復活させるのはとても難しい」と果汁保存の理由を語る。

 供給体制が整ってきたことを背景に、今年3月からキリンビールの缶酎ハイ「氷結」シリーズで県産シークヮーサーを使った商品が通年販売となるなど、全国規模で利用が増大している。

 4月には特産品に地域名を冠して販売できる地域団体商標に「沖縄シークヮーサー」の登録が特許庁から認められたほか、脂肪燃焼や抗炎症など、シークヮーサーが持つ機能性についても注目を集めている。ここ数年、在庫は増加傾向にあるが、認知度の高まりと共に消費の増加が期待されている。

 JAおきなわ特産加工部は「シークヮーサーには機能性で注目を集める成分が他のかんきつ類よりも多く含まれる。機能性に関する研究成果を発信しながら全国的な消費拡大につなげたい。在庫過多とならないよう、生果の取り扱いも強化したい」と話した。(知念征尚)