超音波で車に警告音 高速道の作業中事故防止 西日本高速道路総合サービス沖縄


この記事を書いた人 大森 茂夫

 西日本高速道路総合サービス沖縄(浦添市、藤本秀勝社長)は、高速道路での作業中の事故を防ぐため、超音波を利用して走行中の運転手に注意を喚起する指向性スピーカーを開発した。道路を走る車両に超音波を当てて警告音を発生させ、車中の運転手の耳まで警告音を届ける。走行車両にピンポイントで音を伝えるのは世界でも初めての試みで、道路周辺に騒音影響を出さない特徴がある。

超音波を使った車両注意喚起スピーカーを開発した梅森洋事業開発課長(左)と土田賢一営業課長=30日、浦添市の西日本高速道路総合サービス沖縄

 11月から沖縄自動車道で使用を始め、全国の高速道路へ普及を目指す。

 沖縄自動車道では2013年7月、工事のために交通規制をしていたところ規制内に車両が突っ込み、同社の社員が死亡する事故が起きた。同社では道路作業従事者の安全を守ろうと、漫然運転や居眠り運転に音で注意を促し、道路上の作業に早めに気付く方策の検討を始めた。スピーカーの開発を担当した梅森洋事業開発課長は「現状は標識など視覚による注意喚起だけだが、聴覚にも訴えることで安全運転、安全運行につながる」と語る。

 超音波は人間の耳には聞こえない高い周波数の音で、特定の方向に向かって遠くまで伝わる特性がある。開発した指向性スピーカーは道路を規制しての作業現場の手前に設置し、「ピ・ポ・パ」という警告音を超音波に変えて走行車線の一定範囲に向けて照射する。照射範囲の車線にさしかかった車両に超音波がぶつかると、波形が変わって耳に聞こえる音に戻る仕組みになっている。

 音響の業務経験があった梅森課長は、可聴音に戻った警告音が車内まで効率良く響く音圧や照射角度など独自の検証を重ね、3年をかけて開発した。

 通常のスピーカーから走行車線に向けて音声や警告音を流す注意喚起システムはあるが、土田賢一営業課長は「沖縄自動車道でも対面通行規制で使用したことがあるが風の方向で音が周囲に飛んでしまい、周辺住民から騒音の苦情が寄せられていた。警告音を発する対象範囲を絞れるシステムは全国的にも需要があるだろう」と語る。

 11月に東京であるハイウェイテクノフェアに出展を予定し、沖縄発で全国展開を図る。梅森課長は「将来的にはブザー音だけでなく音声も流せるようにする」と語った。