来年度沖縄予算、県反発「沖振法に逆行」 国、知事選見据える?


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 政府が2018年度の沖縄関係予算の概算要求で、一括交付金を約100億円減額し、国直轄事業の予算を増額したことに、県側が「沖縄が自ら主体的な施策を講じると定めた沖縄振興特別措置法の趣旨に反する」(幹部)と反発を強めている。概算要求で政府は(1)17年度予算額の3150億円を下回らない数字とする(2)国が自ら使途を定めた予算を優先して積み上げる(3)積み上げ後、総額3150億円の範囲内で一括交付金の額を決める―という流れを採用した。この方針の場合、県や市町村が企画する事業の予算確保が制約される。名護市辺野古の新基地建設を巡り県と国が対立する中、「振興策」で県政の影響力をそぎ、国の影響を強める意図があるとの疑念が県庁に高まっている。

 内閣府沖縄関係予算のうち、一括交付金が減額されるのは4年連続となる。一方、17年度の一括交付金を減額した際、内閣府は予算の執行率が低いとの根拠を示していた。そこで県は17年度予算の執行率を高め、全国平均と変わりない水準まで改善したが、18年度予算の概算要求では再び一括交付金は減額された。内閣府はその理由について国直轄事業の“優先積み上げ論”を初めて持ち出した。

◆手段の問題

 概算要求額の決定を受け、9月上旬に行われた県と内閣府の会合。県は一括交付金の減額について「沖縄の自主性を重んじ、潜在力を引き出すとした沖縄振興特別措置法の趣旨に反する」と主張し、「納得できない」と訴えた。その上で「県や市町村が主体的な選択で事業を行える一括交付金を増額すべきだ」と求めた。だが内閣府側は「振興計画を推進するのに、国直轄事業をするか、一括交付金事業をするかは手段の問題だ」とはじき返した。

 「振興事業」に関して政府サイドが県の主導権を奪い、自らが主導権を奪おうとする動きは他にもある。

◆国直轄に衣替えも

 県が17年度に一括交付金を活用して実施するため当初予算に計上していた「離島型植物コンテナ実証事業」。コンテナ内で葉野菜を生産し、離島の不利な生産性を克服する目的で、県と南北大東村などが企画していた。実証実験も兼ねており、成果が出れば他の地域にも広げる予定だった。

 だが9月上旬、計画は頓挫する。内閣府から事業予算の交付決定が出ず、一括交付金を充てることができずに県は「年度内の実施は厳しい」と判断した。一方で内閣府は、自らの直轄で植物コンテナ生産事業を実施する方針で、南大東村や粟国村は県の代わりに国と事業を行う方向で調整を進めている。

 こうした動きを受け県庁では9月中旬、幹部らが緊急の会議を開き、同様の事例がないか調べることを確認した。

 一括交付金の減額や、国直轄事業への“衣替え”の動きについて県庁内には、来年の知事選を見据え、特に保守系の首長がいる自治体をより政府側に取り込もうとする狙いもあるのではと警戒する声もある。県幹部は「できるだけ振興事業を国が直接行い、国の影響力を高めようとしているのだろう」と分析する。そして不満をぶちまけた。「地域の発想と要望に基づき一括交付金でやろうとしていたものにまで、国がダイレクトで『そこのけ、そこのけ』で来るような事態は異常だ。まるで直接統治で、地方分権の流れにも逆行する」(島袋良太)