沖縄県産牛乳、品薄続く 牛「夏バテ」、酪農家減も


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陳列棚には生乳100パーセントの県産牛乳が品切れになっている=4日午後8時すぎ、那覇市おもろまちのサンエー那覇メインプレス

 沖縄県内のスーパーなど小売店で県産牛乳の不足が続いている。暑さに弱い乳牛の食欲が減退していることで生産量が落ち込んでいる上に、夏休みが明け授業を再開した学校の給食に牛乳を充てているために、小売店に出回る量が著しく少なくなっている。

 牛乳の生産量は、冬から春にかけて増え、夏には減少する。今年は、記録的な猛暑で8月は前年同月比で89・6%と約1割(174トン)減るなど過去6年間で最も少なくなった。牛の「夏バテ」が続いているため、生産量の回復が遅れている。

 県酪農農業協同組合によると、県内の牛乳生産量は1日平均約49トン。このうち学校給食に約30トンを充て、残りはわずか約19トンほどとなる。そこから病院などに卸されるため、県内の小売店に卸す量がさらに少なくなる。小売店からは、1リットル紙パックが1日数本しか入荷しないと嘆きの声が上がっている。

 9月下旬、那覇市の天久りうぼう楽市では、商品棚に品切れが目立っていた。高齢の両親と暮らす51歳の女性は「目当てのものがなかった」とため息をついた。

 生活協同組合コープおきなわ(浦添市)では、一番売れ筋の自社ブランド「コープおきなわ牛乳」の包装から「おきなわ」の文字を取った。県内産の不足時は県外産を混ぜざるを得ないからだという。

 県産牛乳の不足問題は暑さだけではない。担い手不足などで県内の酪農家の戸数が減少の一途をたどり、生産量減に拍車をかけている。

 県酪農農業協同組合によると15年前は、現在の約2倍の生産量があり、牛乳が余っていたという。余った分は、九州へ送り販売されていたが、輸送費は酪農家負担のため、生産コストに見合う利益が上がらず、酪農家は余らせないよう生産を縮小していった経緯がある。その上、1992年には180戸いた酪農家が、2016年には73戸になり、飼養頭数も半減以上の4300頭になった。

 こうした中、5年前に就農した糸満市の酪農家、横井直彦さん(43)は、飼っている40頭の牛をさらに10頭増やし、“牛乳不足”に応えようとしている。「酪農の仕事は魅力的」と語り、「より多くの若い人に酪農家になってほしい」と酪農の活性化を願う。

 去年8月には、自宅前にパーラーをオープンさせた。新鮮な牛乳で作ったソフトクリームは近所の人にも好評で、自分の牛乳を喜んでもらうことでやりがいを感じている。

 県酪農農業協同組合は、農家が安心して牛乳をたくさん作るためには、消費の底上げが重要だと強調する。若者の牛乳離れが進み消費が落ち込む中、外国などからの観光客に消費拡大の機運があると期待を示している。