高江米軍ヘリ炎上 当事者能力の欠如指摘 副知事「壊れたレコーダー」


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CH53米軍ヘリ炎上事故で外務沖縄大使、沖縄防衛局長に抗議する富川盛武副知事(左)=12日午後5時21分、県庁副知事応接室

 東村高江に米軍大型輸送ヘリCH53Eが不時着し、炎上した事故から一夜明けた12日、沖縄県内では与野党による事故への抗議が相次ぎ、県内に怒りが広がっている。国は米側が飛行停止を決めたことをアピールしたが、96時間という期限付き。期限内で徹底的な事故原因の究明や再発防止策の策定が可能なのか疑問は残ったままだ。米軍は12日時点で、県による抗議の呼び出し要請にも応じていない。県は13日、富川盛武副知事が上京し防衛省や米国大使館などに直接抗議し、実効性のある解決策を迫る。

 「多方面からの要請を米側も重く受け止めたと思う」。小野寺五典防衛相は12日午後3時15分、在日米軍のシュローティ副司令官との面談を終え、米軍が東村高江でのヘリ不時着、炎上事故を受け、飛行停止要請を受け入れたことを明らかにした。小野寺防衛相は、その背景に日本側の要請があったことを強調することも忘れなかった。しかし米軍は、小野寺防衛相と面談する以前の12日午前の時点ですでに飛行停止を実行していた。日本側が“成果”として勝ち取ったかに見えた飛行停止は、米側の判断で早々と決定しており、日本側が米軍の運用に関与できない現実を改めて浮き彫りにした。

 県が求めた飛行停止期間は「原因究明がされるまで」。しかし米軍は96時間と期限を定めた。週末を挟んだわずか4日の休止でしかない。小野寺防衛相も、富川盛武副知事に飛行停止の事実を伝えた中嶋浩一郎沖縄防衛局長も96時間の時間制限については一切、言及していなかった。

 小野寺防衛相は、自衛隊でもCH53ヘリの運用実績があることから、事故現場に自衛官を派遣し自衛隊の知見も生かした事故調査に取り組むと強調した。しかし、自衛官は直接軍の事故調査には参加できず、あくまで「米側の調査を聴取する」にとどまる。調査にお墨付きを与えるだけの役割になる可能性がある。翁長雄志知事はこの日、県庁を訪れた自民党の岸田文雄政調会長にも政府の「当事者能力」の欠如を指摘したが、小野寺防衛相が明かした各種対策からも日本政府の当事者能力の高さは読み取れない。

 「壊れたテープレコーダーのようだ」。事故から一夜明け、中嶋沖縄防衛局長、川田司外務省沖縄大使を県庁に呼び事故に抗議した富川副知事。県は、米軍機事故が起こる度に、原因究明や再発防止の徹底を求めてきた。しかし日本側は「米側に伝える」との言葉にとどまる。実効性のある改善が見られない中でまた新たな事故が発生する。この現状にいら立ちを隠さなかった。富川副知事にとって今回の事故は、13年前のあの事故現場に一気に引き戻された感もあったためだ。

 今回、炎上した機体と同系統のCH53Dヘリが2004年、沖縄国際大に墜落した。富川副知事は当時同大に勤め、事故対策本部副本部長として事故対応の最前線にいた。

 「放射性物質は含んでないのか」「民間地の大学に黄色い規制線が張られ、MP(軍警察)が記者を拘束し、その回りを市民が取り囲む一触即発の場面も目の当たりにした」と当時をふり返り事故がもたらす懸念を表明した。

 「県民のうっ積したマグマが点火する可能性もある」と指摘し、今回の事故でも県民の不信が高まっていることを指摘し、実効性のある対応を訴えた。
(仲井間郁江、仲村良太)