地域丸ごと博物館に 国頭でシンポ 「沖縄に地理的優位性」


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国立自然史博物館の県内設置の意義や可能性について議論する登壇者ら=4日、国頭村民ふれあいセンター

 【北部】沖縄に国内初の国立自然史博物館設立を目指すシンポジウム「国立自然史博物館の設立を目指して~ネットワーク型博物館がめざす地域との連携」(日本学術会議動物科学分科会など主催)が4日、国頭村民ふれあいセンターで開かれた。地域住民や識者ら約130人が参加し、自然豊かな地域を丸ごと博物館として活用する国立自然史博物館の意義や実現可能性を議論した。

 第1部では琉球大学の土屋誠名誉教授が国立自然史博物館の在り方について基調講演した。土屋名誉教授は「自然そのものに触れ、自然の楽しみを知ることで地域が丸ごと博物館になる」と強調し「それぞれ異なった部門が連携するネットワークを作り上げ、研究者や利用者が地域内外で交流を深められるようにしたい」と語った。

 京都嵯峨美術大の真板昭夫名誉教授は、1978年に世界自然遺産登録されたエクアドルのガラパゴス諸島を例に挙げ「生物の多様性を保存するために、その多様性を地域の生活に巻き込んで一体化させていかないといけない」と話し、自然環境と住民の生活が共存していく必要性を強調した。

 第2部の討論会では、参加者からの質問を交えて沖縄に国立自然史博物館を設置する意義やガイド育成の必要性を議論した。昆虫写真家の湊和雄さんは「やんばるでガイドの説明が間違っている時がある。小笠原諸島ではガイドは非常によく勉強しており、そういう育成が必要だ」と指摘した。国立科学博物館の松浦啓一名誉研究員は沖縄に博物館を設置する意義を「陸続きで人が集まりやすいのは大都市圏だが、沖縄には美ら海水族館がある。いい内容の展示や教育普及を活用できる。東南アジアと近く共同研究や支援ができ研究者コミュニティでは評価される」と地理的優位性を強調した。

 シンポジウムに参加した辺土名高1年の上原玄武さん(15)は「聞いていてすごく楽しくて勉強になった。これからも地元のことを学んで自分の経験にしていきたい」と感想を語った。