戦後医療の足跡つづる 中部病院「臨床研修制度」50年記念誌


この記事を書いた人 平良 正
「沖縄県臨床研修事業50周年記念誌」

 1967年に沖縄県立中部病院で確立された医師の「臨床研修制度」が今年で50周年の節目を迎えた。県はこのほど、臨床研修事業50周年を記念した記念誌を発刊した。米国政府の予算で始まった同制度は復帰後も県予算で継続され、県内の医師確保や、国の臨床研修制度導入のモデルにもなったといわれる。記念誌では同事業に携わった医師らが研修制度への思いを寄せた。

 沖縄戦を生き残った医師は、わずか60人だったといわれ、戦後、県内の医療事情は悪化をたどっていた。そのため、琉球政府や日本政府、米国民政府は国費留学制度を導入し、医師確保を進めた。しかし、本土からの帰還率は低く、医師の定着には至らなかった。

 こうした状況を打開しようと始まったのが中部病院の臨床研修制度だった。米ハワイ大学の協力の下、米国式の研修プログラムを導入し、2004年には北部病院や南部医療センター・こども医療センターでも実施された。臨床事業の修了者は千人を超え、うち約65%が県内に残るなど県内の医師確保に大きく貢献した。「たらい回し」がないといわれる沖縄の救急医療体制の構築にもつながった。

 同制度の8期生として研修を受けた県の伊江朝次病院事業局長は記念誌で「本県のみならず、優秀な医師を全国に排出し、研修制度に影響を与えるなど、わが国の医療に貢献を果たしている」と評価した。

 50周年を記念した式典と講演会が11日午後1~5時まで、宜野湾市の沖縄コンベンションセンター劇場棟で開かれる。元中部病院院長の真栄城優夫さんが「臨床研修の原点とプロフェッショナリズム」と題した講演をするほか、記念シンポジウムも開かれる。入場は無料で、来場者には記念誌を配布する。