芭蕉布製法、科学で分析 OISTの野村研究員ら 無駄なく風土に適し


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 沖縄科学技術大学院大(OIST)の野村陽子研究員と琉球大の諏訪竜一准教授らの研究グループは22日、沖縄の伝統工芸品・芭蕉布の製造工程の一部を科学的に分析した結果を発表した。

分析結果を発表する沖縄科学技術大学院大の野村陽子研究員(右)、琉球大の諏訪竜一准教授(中央)、OISTの佐々木敏雄さん=22日、県庁

 芭蕉布はバナナの一種・イトバショウの偽茎の部分を原料とするが、茎を構成する「葉鞘(ようしょう)」を剥ぐ選別工程「ウー剥ぎ」の作業は「葉鞘」の中でも維管束が集まり、比較的長い糸を作りやすい外側の部分を取り出して糸作りを効率化していることが分かった。

 維管束は中に穴があいた細い管が束になっており、表面積が増えるこの構造が水分の拡散に寄与し、蒸し暑い沖縄の夏に適した布として親しまれる要因の一つになっているとした。

 原材料を木灰汁を薄めたアルカリ溶液に入れて煮沸する工程は繊維を柔らかくする効果に加え、原材料内に含まれ、かゆみのもとともなるシュウ酸カルシウムを減らす効果もあったことが確認された。

 OISTの野村研究員は、乾燥した米カリフォルニア州から2014年に沖縄に赴任し、蒸し暑さに衝撃を受け「エアコンのない昔の人たちが何を着てこの環境下で生活をしていたのかと興味を持った」と研究のきっかけを振り返った。

 研究はまだ始まったばかりとした上で「製作工程で無駄と感じられた部分にも役割があった。バナナ繊維は近年エコロジーの観点からも注目されており、伝統的な製法を発展させて利用の可能性を広げられるのではないか」と期待した。