サバニ、糸満市文化財へ 海人工房展示 50年前製作の基本型


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糸満市が文化財指定に向けて作業を進めているサバニ(中央)=1月12日、糸満市西崎の糸満海人工房・資料館

 【糸満】糸満市教育委員会は、市西崎の糸満海人工房・資料館で展示されている、基本的な型で作られフーバシラ(帆柱)など一式そろった約50年前のサバニの市有形民俗文化財(工芸)指定に向け、作業を進めている。このほかミーカガン(水中眼鏡)も指定する考えだ。市教委は、サバニの製造技術も「保持者として認定可能」とし、糸満海人文化の保存継承に取り組む構えだ。

 糸満帆掛サバニ振興会(大城清会長)はこのほど、市役所に上原昭市長を訪ね、糸満の人たちが作り育ててきたサバニと、付属するフー(帆)やウェーク(櫂(かい))、ミーカガンなど糸満海人文化の諸道具を含めて市の文化財・文化遺産として指定するよう要望した。これに対し上原市長は「皆さんの意見をまとめながら前向きに取り組んでいきたい」と述べた。

 要請に先立ち、糸満帆掛サバニ振興会は昨年11月、島根県の重要有形民俗文化財で同県の美保神社に保管されているサバニの実測調査をした。このサバニは、糸満の漁師十数人がアギヤー漁をするため、1937年ごろから4年間、島根県沿岸などで使用された。戦後、漁師たちが戻る際にサバニを譲ったという。運んだ2艘(そう)のうち1艘は不明。糸満に同型のサバニは残っておらず、誰が製作したか分からないという。

糸満のサバニを市の文化財に指定するよう上原昭市長(左から2人目)に要望書を手渡す大城清会長(同3人目)ら=12月27日、糸満市役所

 調査に参加したサバニ大工で振興会の大城会長は「接着剤のない時代に複雑な接合技術で造船していることに驚いた。技術は神業で、これまで見たことがない」と話す。

 振興会は市への要請の席上、島根県での調査も報告した。次世代に技術と海人文化をつなげるため、美保神社から借りたサバニの図面をデジタル化するほか、小中学生向けの教材を作成することなどを説明。大城会長らは「糸満はサバニの街だが、子どもたちはあまり歴史を知らない。糸満のサバニ文化をもっと広めるためにも文化財にしてほしい」と要望した。