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<メディア時評・本土メディアの沖縄報道>差別拡大に消極的加担 ヘイト黙認、「意図」拭えず

 沖縄県内でヘリ事故が相次いでいる。この明らかな異常事態に対し、防衛相は「多すぎる」とは言うものの、どこか他人事だ。住民への危険を、除去しようという気概が見られないからだ。米軍自身が世界で一番危険と自認している基地は、即時かつ無期限の運用停止にするのが当然の帰結と思われるがもしそれができないなら、せめて例外なき飛行運用ルールの実行を確約させるのが、日本政府の最低限の仕事であろう。

続く「他人事視」

 こうした「他人事視」は、本土メディアも同じだ。6日の伊計島での不時着事故の記事は、産経新聞の場合、第2社会面のベタ記事(見出し1段)で、わずか25行だ。ちなみに隣の記事は、相撲の立行司によるセクハラを伝える、33行の記事で、見出しは2段で副見出しもついている。連続して発生した8日の事故に関しては、さすがに3段見出しの少し大きな扱いをしたものの、第2社会面の扱いは変わらない。

 こうした記事の扱いは昨年末以来のヘリ部品の落下事故にも共通するが、より分かりやすい差異を示したのは、1年前の名護市安部でのオスプレイ墜落事故の扱いだろう。そこでは、あえて単純化すれば、「沖縄と東京」「政府寄りと沖縄寄り」の2つの要素のかけあわせで、見事に事故の伝え方が分かれたからだ。すでによく知られていることではあるが、事故を(1)不時着(2)大破(3)墜落―のうち、どの表記を使用したのかという観点で、あらためて比較をしておこう。

【(1)不時着】読売、産経
【(1)+(2)不時着し大破】NHK(NHK沖縄は(2))、フジ、テレビ朝日(報道ステーションは(2))、日本テレビ
【(2)大破した事故】毎日、朝日、TBS(一部番組は(3))、琉球放送(TBS系列)
【(3)墜落事故】琉球新報、沖縄タイムス、沖縄テレビ(フジ系列)、琉球朝日放送(テレビ朝日系列)

 米軍準機関紙ですら墜落と報じた事故を、今月起きた不時着と同じ表現で報じたことは、明らかに読者を誤導するものだったといえる。

 残骸が1カ所にまとまっていたし、「不時着(水)」は政府発表に従ったものだと説明されているが、それこそがいま沖縄で起きていることを直視していない証左であろう。さらに言えばこうした表記の違いは、沖縄の米軍基地に対する無理解や無関心から来るのではなく、政府あるいは米国に対する「思いやり」の結果であると推定されるだけに、根深い問題がある。

虚偽の広がり

 校庭へのヘリ部品落下事故に際し、被害小学校への誹謗(ひぼう)中傷が止まらない状況が報告されている。しかもその内容は、「やらせじゃないか」といった悪質な嫌がらせに始まり、「基地ができた後に学校を建てたのに文句を言うな」といった、基地の歴史的背景を無視した言説の繰り返しだ。そしてこうした、いわば「沖縄神話」ともいうべき誤解や曲解が、県外に限らず沖縄県内においてすら、むしろ広がっている実態がある。

 その結果、沖縄問題が日本社会全体で広く一般化する中で、同時に「沖縄は基地で食べている」「人が住んでいないところに基地を造った」、さらには「基地反対運動は県外の過激派がやっていること」―といった明らかな虚偽が広がり、一部で定着しつつある。

 ちょうど1年前の東京のテレビ番組が、沖縄ヘイトであるとして問題になったが、むしろこうした一般的な誤解の広がりが表面化したものともいえる。ちなみに当該MXテレビは、いまだに謝罪していない。昨年10月27日に県内であった、百田尚樹講演会が喝采を浴びるのも同じ構造である。

 こうした状況を、一部メディアが事実上、後押ししている状況がある。さらに言えば、「基地反対運動は過激派の仕業」といった言説を、積極的に広めているといってもよい報道すらある。もちろん大多数のメディアはこうした状況を快く思っていないものの、積極的に火消しすることはなく、黙認しているのが実態ではないか。これこそがより罪深い「消極的加担」であって、前述の小学校への中傷を生む原因になっていると思われる。

 2005年ごろから始まっていた在日コリアンに対するヘイトスピーチを、変わり者の仕業として長い間大手メディアは黙認した。その結果、彼らの声はネットを中心に大きく広がり、繁華街におけるヘイトデモを堂々と行い得るにまで力を持った。その延長線上に、5年前の1月に銀座で行った、沖縄県内全首長によるオスプレイ配備撤回のデモに浴びせかけられた、非国民呼ばわりの誹謗中傷がある。

 メディアは黙認という消極的加担によって、社会全体に差別意識の拡大を許してしまったのであって、今回の沖縄ヘイトは、これと同じ過ちを再度犯してしまっているのではないか。しかもより深刻なのは、それに「意図」が入っている可能性が拭えない点だ。

歴史修正する政府

 現在、日本中で明治ブームを起こそうという動きが進んでいる。首相官邸のウェブサイトに特設ページが開設され、内閣官房「明治150年」関連施策推進室が中心となって、民間・地方自治体を巻き込んだ国家事業として実施されているからだ。そこでは、明治期の施策を賛美し、政府が主導して時代のイメージを作り上げようとしている。現政権は、教科書検定基準の変更など、積極的に過去の歴史への関与を深めている。その過程で、時の為政者にとって不都合な真実は埋もれることになる。

 現政権は、日々の行状を記録として残すことを拒否する一方、過去の歴史を書き換えることには熱心という特徴を持つ。メディアは、こうした国が深く関与した積極的なイメージ作りとは一線を画すことが、真っ当な沖縄報道をする土台であることを忘れてはならない。それが消極的加担から脱却し、正面から沖縄の問題を日本の問題として捉える足がかりになるからだ。

(山田健太 専修大学教授・言論法)