嫌いでも食べやすい 「塩セロリ」登録出願 塩分含ませ栽培 沖縄県外出荷増


この記事を書いた人 大森 茂夫
「子どもがおいしく食べられる塩セロリ」を目指して生産に励む(右から)玉城悟さん、屋宜芳文さん、城間鉄也さん=南城市玉城字船越の塩セロリ畑

 【八重瀬】沖縄県八重瀬町の農家らが沖縄の塩や岩塩を水で薄めて散布し、栽培する「塩セロリ」の県外取引が増えている。癖が少なくうま味があり、セロリ嫌いの子どもでも食べやすいと好評で、今期は最盛時で1週間に約7トンを出荷した。2017年10月に農作物卸のアグロオーガジャパン(中城村、伊佐尚子代表)が商標登録を出願した。八重瀬町具志頭で生産する玉城悟さん(44)は「子どもたちがおいしく食べられるセロリを作りたい」と抱負を語る。

 県内のセロリは、台風で潮風を浴びることや海岸近くの土壌はミネラルが豊富なことなどから「塩の味がする」と言われていた。

 アグロ社は、初期投資が少ない露地栽培で県外に出荷できる新作物として06年ごろからセロリの取引を始め、08年に「塩セロリ」と名付けた。

 しかし県外のセロリは、茎が黄色系でほとんどが生食用。茎が緑色の県産は生食と炒め物の両方に適しているが、堅いイメージで売れなかったという。

 06年から生産する八重瀬町具志頭の屋宜芳文さん(51)は「もともと塩の味がしていたが、塩トマトを知り、おもしろいと思った」と、2年前から本格的にセロリの塩分濃度や散布のタイミングを研究した。現在は八重瀬町内を中心に4人で「塩セロリ」を生産する。

 アグロ社が販路拡大をはかり、福岡のスーパーが発売したのをきっかけに全国のバイヤーの目に留まるようになり、18年には関東のイオンモールも定番商品として扱うようになった。

 06年の出荷量は1週間で約300キロだったが、18年の最盛時は約7トン、平均約2トンまで増加した。栽培面積も約1300平方メートルから約5万平方メートルまで広がった。

 8年前に会社員から転職し、八重瀬町と南城市で栽培する城間鉄也さん(44)は「セロリは嫌いだが、塩セロリは食べられる」と笑う。店頭で試食販売を行う玉城さんは「セロリが嫌いな子どものほとんどが『おいしい』と食べる」と笑顔を見せる。

 伊佐代表は、植え付け前に予約を受ける計画栽培にこだわり「生産者が無理せず栽培でき、ブランド力も上がった」と強調する。商標登録によって生産者の技術を守られるとする。

 「塩セロリ」の出荷は今月末ごろまで。県内では、リウボウストア15店舗で今月末まで販売される。
(豊浜由紀子)