体制や負担で温度差 沖縄県と市町村 医療安定へ協議継続 北部2病院統合計画


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北部12市町村長が参加した県と北部医師会病院と基幹病院に関する第3回会合で意見を述べる宜野座村の當眞淳村長(中央)ら=1日、名護市の北部会館

 【北部】深刻な医師不足で診療制限が相次ぐ沖縄本島北部地域。医療体制を立て直そうと、県は県立北部病院と北部地区医師会病院を統合し基幹病院を整備する計画を示し、関係する北部地域の首長や医師会との協議を進めている。病院整備の思いは双方一致しているが、経営体制や地元負担の在り方などの考えには大きな差がある。北部市町村会は国に基幹病院整備の予算を要請するなど、今秋の知事選を見据えた動きも出てきた。

 「今の経営形態でこの問題は解決しない」。1日に開かれた県と12市町村長らとの協議後、医師会の宮里達也理事は強調した。医師会は基幹病院の経営形態が現行の地方公営企業法の全部適用になれば、予算や人事などの面で融通が利きにくいと問題視する。医師会は県に対し「自由度のある経営形態が望ましい」とする意見を伝え、経営形態の見直しを重要視した。本部町の高良文雄町長は「医師会の考え方に100パーセント賛成する」と強調した。

 県はこれまでの協議で、病院整備費を約220億円と試算し、国庫補助金などを差し引いた額の5分の2を北部12市町村に負担するよう提示した。経営形態の在り方や地元負担を疑問視する首長は多い。當眞淳宜野座村長は「他の県立病院には自治体負担を求めていないのに、なぜ北部だけ負担しないといけないのか。住民に説明できない」と語気を強めた。

 県保健医療部の砂川靖部長は、さまざまな経営形態を想定して協議していくことを歓迎し、「基幹病院はどうしても必要。力を合わせてやっていかないといけない」と力説した。

 北部の基幹病院整備が今秋の県知事選で「大きく流れが変わる」と関係者は指摘する。「知事選で政府が支援する候補者が勝てばいい。そうなれば国が予算を付けられる」と自民党関係者は語る。別の関係者は「名護が渡具知市長になったから国も支援したいと言っている」として、北部の基幹病院整備は国の手厚い支援が可能だとみている。自民党の武見敬三氏が沖縄入りし意見交換するなど、国も基幹病院整備に動き出している。

 名護市の渡具知武豊市長は「医師会の意見は理解できる。12市町村で意見をとりまとめて、その中で合意形成していきたい」と、今後の病院整備には慎重な姿勢を見せた。(阪口彩子)