再編交付金巡り紛糾 名護補正予算案持ち越し 市長「財調基金」拒否も過去提案


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄県名護市の渡具知武豊市長が市議会6月定例会に提出した補正予算案はそのまま採決されず、11日の本会議に持ち越された。辺野古への新基地建設に協力姿勢を示したことで得られる再編交付金を使って、保育料と給食費を無償化する補正予算案に対し、野党が反発、2日の本会議で修正案を提出した。修正案は賛成多数でいったん可決したものの渡具知市長が反撃し、審議のやり直しを求める再議権を行使した。再議後に可決するには3分の2の賛成が必要となる。再度採決した結果、賛成は3分の2に届かず修正案は否決された。事実上「基地を受け入れた」ことで得られた再編交付金を巡る与野党の攻防が激化している。

 渡具知市長は再編交付金の代わりに財政調整基金を使う内容の野党修正案を疑問視する。同基金は市の補填(ほてん)財源として約24億円計上されているが、今後の追加事業や、はしかの流行のような突発的な事態が発生した場合に活用する財源だと強調する。

 市幹部は「空手形と同じだ。修正案を可決したとしても保育料と給食費の無償化が実施されることはない」と話し、野党が提出した修正案では、保育料と給食費無償化は9月1日から始められないと断じた。

 これに対し野党は「我々は年内に無償化を実現できる予算案を提出した。それを否決したのは市長側だ」と反論。野党が強気に出るのは、渡具知市長が市議時代に子育て支援の財源に財政調整基金を充てることを提案していたからだ。渡具知氏は2017年3月14日の市議会定例会一般質問で「市の預金といわれる財政調整基金に平均30億円確保されている中、その財源を子育て世代の親の負担軽減に活用すべきではないか」と主張していた。

 野党は「市長がもともと自分で言ったこと。あらゆる財源を活用すると言うなら責任を取ってその策を考えるべきだ」と指摘した。野党側も財政調整基金を切り崩すことのリスクを把握した上で、市長に揺さぶりを掛けた格好だ。

 さらに、9月からの保育料無償化に認可外園が含まれていない側面も突いた。市側は「認可外も(無償化を)やる方向で調整している」とするが、現時点で認可・認可外園同時に無償化を実施できないことを野党は「不公平だ」として、攻めの姿勢を崩さない。

 11日の本会議で野党は再度、修正予算案を提出する考えだが、その場合は市長も同じように再議権を行使する構えだ。与野党の主張がこのまま平行線をたどれば補正予算案は可決せず成立しない公算が大きい。与野党は歩み寄る気配はなく、補正予算の“着地点”は不透明なままだ。
 (阪口彩子)