育鵬社推進団体に公費 教育再生首長会議、事務委託 宮古・石垣市長も支出


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 育鵬社など保守的な教科書の採択拡大を目指す一般財団法人「日本教育再生機構」(八木秀次理事長)に事務局を委託して2014年に設立された「教育再生首長会議」(会員131人)が、委託費として年間約400万円を再生機構に支払っていたことが19日までに分かった。首長会議は保守系の市町村長有志が参加しており、会費などを公費で支払っているとみられる。県内から会員となっている中山義隆石垣市長、下地敏彦宮古島市長は公費の支出を認めた。

 首長会議は、16年度は総会を含めた年4回の会合と首相や文部科学大臣表敬を行った。発足した14年度の委託費の予算は120万円だったが、年間5~6回の行事を実施するために360万円が必要として、15年度に会員の年会費を1万円から2万円に、勉強会などの会費も増額した。16年度決算では支出計約545万円のうち約400万円を委託費が占めた。

 日本教育再生機構は「新しい教科書をつくる会」から分かれた団体で、育鵬社の教科書採択を推進してきた。八木理事長は首長会議の第1回準備会議から出席して立ち上げを主導した。今年1月の首長会議の会合では、八木理事長が顧問を務める「日本教科書株式会社」の中学道徳教科書の宣伝資料が配布された。これらの首長会議資料は「子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会」などが情報公開請求で入手した。

 教科書採択問題に詳しい高嶋伸欣琉球大名誉教授は「支出の大半を特定の教科書の採択を進める団体への委託費が占めている。その会費を公費で支出しているのは問題だ。各地で住民監査請求の動きが出始めている」と話している。

 発足時から会員の中山石垣市長は17日、琉球新報社の取材に対し「会議では特定の教科書の話は出ず、問題はないと思う。事務局に日本教育再生機構が選ばれていることも知らないし、機構が特定の教科書を広めようとしているとの認識もなかった」と述べた。

 同日、下地宮古島市長は「特定の教科書を支援するという意図も、教科書の会社とのつながりについても認識は全くない。この会議でもそうした話は一切出ていない。議会の承認を経て支出しているので、問題はないと思っている」と述べた。