海洋資源から水虫薬 新抗真菌剤で可能性 シード探索研 5年後の医薬品化目指す


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 シード探索研究所(うるま市、石見盛太社長)はこのほど、新規母核を持った抗真菌剤「SRI―KH001」を発見した。沖縄周辺の無人島を回り、砂浜から微生物のサンプルを集め、大量の微生物を短期に評価できる同社の技術で発見に至った。爪白癬症(水虫)に効果の高い薬の開発が期待できる。今後、長期毒性試験と臨床実験を行い、5年後の医薬品化を目指す。

抗真菌剤を発見した石見盛太社長=3日、うるま市の沖縄健康バイオテクノロジーセンター

 爪白癬は、白癬菌という真菌(カビ)によって起こる。爪はタンパク質の一種であるケラチンの小さな粒子が集まってできている。従来の白癬菌薬の「エフィナコナゾール」は、ケラチンへの吸着性が高く、爪の奥まで浸透しづらい。完全治癒率は17・8%しかないと言われている。

 一方「SRI―KH001」は、爪への浸透性が高いので、殺菌効果がある。ケラチンからの離れやすさを表した遊離率は、エフィナコナゾールが約40%なのに対し、「SRI―KH001」は約60%に達する。マウスやモルモットで実験を行い、有効性、低毒性、低変異性が実証された。

 石見社長は「従来の薬は、ケラチンにくっつき過ぎるから浸透せず、効果が薄い」と話す。

 日本の爪白癬症の患者数は1100万人。世界の抗真菌市場は1兆300億とされる。

 石見社長は大手製薬会社のアステラス製薬に30年間勤め、薬品開発の経験を積んできた。「まだ3人しかいない小さな会社だが、資金調達をして製品化したい」と意気込む。

 現在世界10カ国で特許出願中だ。

 今回の発見は、同社が新たに開発した独自の技術「HTS法」で、3カ月で100万株の微生物を評価した。従来の方法だと、1年で10~20万株のサンプル評価しかできないという。

 今後抗真菌剤にとどまらず、抗ウイルス剤や抗がん剤の領域でも開発を進める考えだ。

 (中村優希)