老朽化した中心商店街のアーケード、公設市場の建て替え まちぐぁー課題山積 [県都を歩く ’18那覇市長選]中


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平和通りのアーケード。台風被害でぽっかりと空いた穴からは青空が見える=9日、那覇市牧志

 9日の昼下がり、沖縄県那覇市の平和通りを訪ねると、ハイビスカス柄のワンピースを店先に並べた内間ノリさん(77)がアーケードを見上げていた。視線の先には破れた布の穴から青空がぽっかりとのぞく。老朽化したアーケードに台風24号の襲来が拍車を掛けた。「アーケードがないと商品も日に焼ける。とにかくこれだけでもきれいにしてくれたら」と苦笑いを浮かべた。

 那覇市民の生活を支え、今や県内有数の観光地として知られる那覇市のまちぐゎー(市場)。老朽化した建物の建て替えに伴い、中心商店街一帯が変わる“転換点”に来ている。

 「アーケードの昔ながらの雰囲気がいいから人が来る。この雰囲気を残してほしい」。パラソル通りで呉服店を営む与那嶺幸子さん(68)がそう言うと、買い物客の古波倉信子さん(68)は「アーケードは最高だけど老朽化は危険よ。沖縄らしさも残して安心安全にして」と返した。

 牧志から開南まで続く総延長約1・7キロのアーケード街。近隣に大型商業施設が進出した1970年代後半~80年代にかけて各通り会が次々と設置した。今では老朽化で支柱の腐食が進んでいる。市試算では、平和通りの建て替えだけで約9億5千万円が必要だ。アーケードは公設でない上に、ほとんどが建築基準法や消防法に違反している。市は中心商店街が市の活性化に寄与しているとし、法的な基準を満たせば建て替え費用の一部を補助すると決めた。しかし、現時点で補助率は未定。店舗を所有する家主と店子(たなこ)が異なるため、話が進まない通り会も多いなど課題は山積する。与那嶺さんは「店だけの負担では無理よ。市が全額補助してほしい」と求めた。

 日が傾き始めた頃、牧志第一公設市場向かいの飲食店に入った。「工事が始まったら引っ越しも考えなきゃいけない」。店主の男性がつぶやく。19年4月から公設市場はにぎわい広場の仮設市場に移転し、建て替え工事が始まる。市場向かいの店舗の近くで工事用のフェンスが立つ予定だという。歩道が狭くなる上に市場客の流れが変わるため、周辺店舗への影響は避けられない。「建て替えは必要だから仕方ない」と淡々と話した。

 公設市場の粟国智光組合長(43)は「中心市街地全体のビジョンが必要」と指摘する。地元客の市場離れも進む中、西海岸開発など那覇市外にも大型商業施設ができる計画があり、市内のにぎわいが維持できるか懸念する声も出ている。「次期市長には商店街に足を運び市民と思いを共有してほしい」。商店街関係者は、次期市長の“本気度”を見ている。
(’18那覇市長選取材班)