洋裁が病回復の契機に 古堅さん、家族らの支え感謝 アビリンピック


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真剣な表情で「洋裁」の競技に取り組む古堅あゆみさん=4日午後5時すぎ、那覇市奥武山の沖縄セルラーパーク那覇

 全国アビリンピックの洋裁部門に出場した古堅あゆみさん(30)=那覇市。オーバーブラウスを製作する競技開始直後、緊張で布地を裁断する手が震えた。心の病で通院する病院で担当の知念玲子看護師(52)から教わったおまじないを心の中で何度も唱えた。「大丈夫、必ずいい方向にいく」。自分に言い聞かせ、家族やクリニックの人など多数の応援団に見守られながら6時間の競技をやりきった。

 元々デザイナーになるのが夢で、東京の専門学校に進学した。だが、精神を病んでしまい、統合失調症と診断された。洋裁は治療の一環で1年半前に始め、短期間で初出場を果たした。

 競技中、残り時間が迫ってくると、時計を確認しながら最後までできることを続けた。目標通りには仕立てられず「肩のパッドまで付けたかったので悔しい」と明かす。それでも「周りの声援が本当にうれしかった。支えてくれた人たちに感謝でいっぱい」と目に涙を浮かべて語った。

 主治医とは「病気に負けない、逃げない、立ち向かう」と約束した。洋裁を始める前までは不安感や倦怠(けんたい)感で1週間ベッドから起き上がれないこともあった。母の貞子さん(66)は「洋裁を励みに克服している」と努力に拍手を送った。

 あゆみさんは「今後は本格的に洋裁を習いにいきたい」と意気込む。現在も幻聴が聞こえるなど完治したわけではないものの、確実に回復し始めている。同じように病を抱える人たちにも「諦めずにいれば何か光が見えてくるはずだ」と優しくエールを送った。