漁師「命関わる」 米軍FA18墜落 南北大東住民「怖い」


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墜落した機体と同型機のFA18のF型(提供)

 FA18戦闘攻撃機が12日に沖縄近海で墜落したことを受け、現場海域に最も近い南大東村や北大東村の住民からは不安の声が上がった。同攻撃機は、米軍嘉手納基地や米軍普天間飛行場にも飛来してきた。繰り返される米軍機の事故に嘉手納基地や普天間飛行場の周辺住民からは「根っこから危険性を除去してもらわないといけない」と基地撤去を求める声や、「日本政府に当事者能力がないために事故が起きる」と政府の対応の鈍さに怒りの声が上がった。

 【南大東・北大東】南北大東島の南西の海上で米海軍のFA18戦闘攻撃機1機が墜落した事故を受け、両村の漁業関係者や村民から「漁師は命に関わる」「海上とはいえ怖い」など不安の声が上がった。

 南北大東村では島の周辺が漁場。南大東村漁業組合の幸地弘組合長は12日午前に北大東近くのパヤオで漁をしていた。海上で特に異変は感じなかったと言うが、「漁師にとっては命に関わる問題。間違ったらどこに落ちるか分からない。怖い」と語気を強めた。「大東近海はソデイカ漁のために本島から多くの漁船が漁に来る。安全に飛行してもらわなければ本当に危ない」と語った。

 北大東村水産組合の知花実組合長は「漁をしていない海域で今のところ組合員にも影響は出ていないが、近くなら大変だった」と話す。北大東村の男性(58)は「時間帯によっては民間機も運航している。墜落したのが島から離れた海上とはいえ怖い。今朝はフェリー『だいとう』も入港した。生活路線があることを考えると、広い海とはいえ訓練は危険だ」と不安そうに語った。

現場周辺はイカの漁場/漂流物で漁影響も

 訓練中の米FA18戦闘攻撃機が12日、南大東島の南西の海上で墜落した事故に、県漁業協同組合連合会の担当者は墜落地点は米軍訓練水域内の可能性を示唆した上で、午後6時半時点で「漁業への影響や被害報告は寄せられていない」とした。ただ、墜落地点周辺にマグロやセーイカ(ソデイカ)の漁場が広がっている可能性もあり、今後、損壊した機体の漂流物などで漁業に影響が出る恐れがあると懸念した。県漁連には事故発生から1時間以内に沖縄防衛局から一報が入った。その後、午後4時までに「関連するような漂流物を発見した場合は海上保安庁に通報を」と呼び掛ける連絡があったという。担当者は「墜落したのはマイク・マイク訓練区域の可能性が高い。機体損壊の状況や破片がどこまで流れているか分からない」とし、墜落地点の正確な位置を割り出した上で、影響を確認する意向を示した。

「根本から危険除去を」/普天間、嘉手納爆音訴訟団

 米空母ロナルド・レーガンの艦載機で、12日に沖縄近海で墜落したFA18戦闘攻撃機は、米空軍嘉手納基地や米軍普天間飛行場にたびたび飛来していた。事故を受けて、普天間、嘉手納の基地周辺住民でつくる爆音訴訟団からは憤りの声が上がった。

 空母艦載機のFA18は、ことし2月、普天間飛行場へ連日着陸し、最大112・7デシベルを記録するなど、周辺住民に騒音被害をもたらした。普天間爆音訴訟団の高橋年男事務局長(65)は事故の一報を受け「最近、(米軍機は)頻繁に落ちている。話にならない」とあぜんとした様子で語った。

 高橋さんは「県知事選が終わった10月以降、普天間では頻繁に外来機がタッチ・アンド・ゴーをする様子が見られた。ひどい状況なので気になっていた」と語り、事故の危険性を感じていたことを明かした。事故原因について「日本側が当事者能力がないために、こういった事故が起きる。日本の国内法を適用して守らせるべきだ」と語気を強めた。

 一方、嘉手納基地では2017年度の航空機騒音測定で、騒音の測定回数が前年度を上回った。事故機の同型機などを含めた外来機の飛来の増加が原因とみられている。

 嘉手納基地爆音差止訴訟原告団の新川秀清団長(81)は「いったいどれだけの墜落事故が繰り返されているのか」と怒りに声を震わせた。「根っこからの危険性を除去してもらわなければ、当たり前の生活はできない。沖縄からの基地撤去そのものに踏み込まないといけない」と力を込めた。