自治体が水道事業の運営を民間企業に委託できるようにする「コンセッション方式」の導入を盛り込んだ「改正水道法」が6日に国会で成立したが、沖縄県内の自治体は民営化に慎重だ。県企業局は5日、民営化せずに公営企業としての運営を継続する方針を県議会答弁で示した。本紙が6日、県内11市に取材したところ、担当者不在で方針が確認できなかった1市(うるま市)を除く10市では、現時点で民営化を検討する具体的な動きは出ていないことが分かった。
県内の水道事業は、本島北部にダムなどの水源が集中し、消費量は中南部が多いことが特徴だ。このため、県外の自治体に比べ、送水する施設が多く、維持・管理のコストが高い傾向がある。県企業局の役割は水源から取水し、きれいな水にして市町村へ供給すること。市町村が各家庭へ配水する。
5日の県議会定例会本会議で金城武県企業局長は、公営企業を継続すると明言し「安全な水道水を将来にわたって安定的に供給していく」と答弁した。
市レベルでも民営化に慎重な傾向だ。各市の担当者からは「専門家は『人口10万人以上で採算が取れる』と指摘している。(10万人未満なら)企業も参入しないのではないか」(豊見城市水道部)、「水の安全性は公でやるべきもので運営権を譲渡すべきではない」(宜野湾市水道局)などの見方が聞かれた。
全水道県企業局水道労働組合(新垣悟委員長)は、全国組織の上部団体が主催する学習会などで海外の民営化の事例などについて情報収集している。新垣委員長は「もしも民営化した場合、台風や地震など災害時の連携が心配だ。(水道事業で)専門的なノウハウの継承が難しくならないか」などと民営化で懸念される点を指摘した。