琉球ガラス 歴史追究 年代物600点、図鑑に 糸満の研究家・河西さん


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琉球ガラスのコレクションの一部を前に、著書「琉球ガラスの年代物コレクション~沖縄ガラス工芸図鑑」を手にする河西大地さん=那覇市泉崎の琉球新報社

 1940~80年代にかけての琉球ガラスの製品の移り変わりを1冊の図鑑にまとめた「琉球ガラスの年代物コレクション~沖縄ガラス工芸図鑑」(白雨草木庵出版)がこのほど出版された。著者は琉球ガラス史研究家の河西(かさい)大地さん(40)=糸満市。琉球ガラスは学術的研究が少なく、本に収蔵されている約600点のうち、今では約8割が製造されていない。河西さんは「過去の作品からガラス工芸文化の流れを知る手掛かりになる」と話している。

 河西さんは糸満市の琉球ガラス村で働く中で、客から「琉球ガラスとは何か」と問われた時にうまく答えられなかったことから、琉球ガラスの歴史へ関心が高まったという。2012年に社内向けの歴史ガイドを制作した後、個人的にガラスの収集と工房への取材を重ねてきた。

 本はグラス、水差し、花器、デカンタなど形や用途によって異なる製品を用途別に収録している。変遷で見えてくるのは、琉球ガラスの製品が時代の変化と顧客ニーズに合わせて、柔軟に変化してきたことだ。

 復帰前の「アメリカ世」には、米国人向けにワイングラスやフルーツパンチを入れるパンチボウルセットなどが作られ、ワインを移し替える「デカンタ」もさまざまな種類があった。当時は米国に輸出されていた製品もあった。復帰後は本土からの観光客向けに、ガラス造花やモール瓶が多くなった。

 河西さんはガラスの製品名を調べるのに苦労したといい、ガラス職人に現物を見せて聞き取りをした。「同じ水差しでも口の部分によって『ペリカン水差し』だったり、『ペンギン水差し』だったり呼び名が異なる」という。

 「いずれは解説本も出したい」と話し、日本でも有数の琉球ガラス工芸文化に注目している。

 本はオールカラーで3777円(税抜き)、全320ページ。戸田書店豊見城店を皮切りに、他店でも順次取り扱う。問い合わせは(電話)070(5411)6726まで。