自宅のくつろぎ、最期まで 米で老人ホーム経営上原邦子さん 理想の施設「沖縄でも」


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 宮里 努

 「最期まで思い思いに過ごせる施設を」。そんな自宅のような老人ホームを米国で実現した人がいる。沖縄県本部町出身の上原邦子さん(67)だ。アンティーク風のベッドにソファ、広いキッチン。カリフォルニア州オレンジ郡で小規模の有料老人ホームを経営して30年余になる。昨年は本部高校の生徒と教員を自費で米国に研修に招いた。上原さんは「若い人には海外の介護事情も知ってもらい、視野を広げてほしい」と語った。

 上原さんは18歳で米国人の夫と結婚し渡米した。1980年ごろ、美容師をしていた時の常連客の女性が入居した老人ホームを訪ねて驚いた。汚れて尿の臭いが漂う部屋。「帰りたい」と訴える女性を見て「どうにかしたい」と考えた。それが介護職を目指す大きな転機になった。米国で介護の資格を取得。カリフォルニア州で定員6人の小規模ホームを6施設開設した。ピアノを弾いたり、読書をしたり。入居者が最期まで思い思いに過ごす。理想の老人ホームが実現した。

 昨年、母校の本部高校福祉コースの生徒を米国に招いた。生徒2人と教員1人の渡航費などは全て上原さんが負担。一行は1週間、上原さんの別邸に滞在し、小規模ホームでの補助を体験した。研修を企画した理由の一つには同校の廃校の危機もあった。「アメリカで先進的な介護施設を見れば生徒のモチベーションも上がり、学校の特色になるはず。井の中の蛙(かわず)にならず、視野を広げてほしい」

 上原さんは3年前から本部町野原の「ローズヒルホーム」でデイサービス、昨年からショートステイを運営しており、米国と本部を行き来する。しかし、有料老人ホームの許可は得られていない。

 上原さんは「日本は規制が細かく、病院みたいな施設がほとんど」と指摘する。「最期まで好きな生き方ができる老人ホームを沖縄につくりたい。みんなが視野を広げれば絶対にできるはず」と話し、沖縄での「自宅のような老人ホーム」の実現を目指している。 (田吹遥子)

アンティークの調度品が飾られた施設と上原邦子さん=2日、本部町野原のローズヒルホーム
米カリフォルニア州で経営する有料小規模老人ホーム(上原邦子さん提供)