震度7の揺れ 備えて 阪神・淡路大震災から24年 過去を教訓に防災を


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簡易コンロや自由自在ライトを頭に付けて説明する社会福祉士で防災士の稲垣暁さん=那覇市のなは市民活動センター

 震度7の大地震による建物倒壊と二次災害の火災で多くの犠牲者を生んだ阪神・淡路大震災から17日で24年。もしも同様の地震が沖縄を襲ったらどんな被害が広がるのか―。過去の災害からどのような教訓を学べばよいか。当時、神戸市で震災を経験し、現在は社会福祉士・防災士として活躍する稲垣暁さんは「起こり得ることを想定した防災対策をしてほしい」と話した。

対策品、“百均”で購入可

 

 地震発生時の1995年1月17日午前5時46分、神戸市東灘区の自宅で寝ていた稲垣さんは、猛烈な突き上げと揺れを経験した。「洗濯機の中でぐるぐるかき回されるイメージの揺れだった。揺れは15秒くらいだったが5分続いたように感じた」と振り返った。

圧死が9割

 地震での死因は9割が圧死だった。うち8割が腹や胸の上に物が倒れて呼吸ができなくなる窒息で亡くなった。稲垣さんは、倒れたたんすの観音開きになった扉の間にいて「紙一重の状況だった」。

 なんとか外に出ると、遠くの建物が燃えていた。ブロック倒壊や亀裂で道路がふさがり救助車両は現場にたどりつかず、黒煙を上げて燃える建物をただただ見ることしかできなかったという。当時を振り返り稲垣さんは「まずは自宅から脱出し、津波や火災に巻き込まれないようにすることが大切だ」と話した。

 稲垣さんによると、阪神・淡路大震災の被災地と沖縄の共通点は人や建物、車の“過密”だという。「地震で建物が倒壊しても救助車両が入らず逃げられない地域がある。また、避難所の数が少ないため車での避難生活を余儀なくされるだろう」と指摘した。

ひも部分の形を自由自在に変えられるライト。かばんに付けたり手首に巻いたりして両手が空いた状態で照らせる

最初に守る部位は

 「地震が起こったら、まずは頭を守り、倒壊物や落下物から逃げるのが重要だ。頭部の損傷が大きなダメージとなる。布やかばんで首などの体を隠すのが望ましい。隠れる場所がなければ壁側に寄って揺れの収まりを待つ。慌てて外に飛び出してはいけない」と説明した。揺れが落ち着いたら室内でも靴を履き、破損物によるけがを防ぐ。外に出たときも頭上からの落下物がないか注意する必要があるという。「土砂崩れや津波などの災害危険地域で、避難指示があった場合は直ちに避難してほしい。壊れたコンセントとプラグからの出火を防ぐために、避難するときはブレーカーを落とすのが理想だ」

地震後に起きること

 地震が起こると、長期的な停電や断水、ガスの停止、通信手段の寸断など、ライフラインが機能しなくなる可能性がある。それを見越した行動として、断水が想定されるときには状況が収まり次第、浴槽などあらゆる入れ物に水をためる。「段ボール箱にビニール袋をかぶせててバケツ代わりにすると大量の水がためられる」という。

用意すべき物は

 災害に備えてどんな物を用意するといいのか。稲垣さんによると、有効な持ち出し品は百円均一である程度はそろえられるという。「災害時は断水で手を洗う水もない可能性がある。除菌シートやアルコールが役立つ。塩や黒糖は熱中症の予防になる。耳栓やアイマスクは睡眠を確保するために便利だ」

 防災バッグなどの持ち出し品の準備は大切だが「非常事態時はまず命が優先だ。家に戻ることが可能なら、重い荷物は持たずに普段の生活と衛生を維持できる最低限の物を持ち出すと良い」と話す。

 照らす方向を自由に変えられるライトは、ヘッドライトにしたり、手首に巻いたりと付ける場所を選ばない。アウトドアコンロなどのキャンプ用品は車での避難生活でも役立つ。

 車のガソリンは多めに入れておく習慣をつけると、燃料不足で慌てずに済む。また、車の中にスマートフォンやパソコンの充電ができるUSBコンセントを取り付けると、停電しても情報収集ができる。

 いつ起こるか分からないのが自然災害。自然の猛威を侮らず、過去の災害から命の守り方を学び、いざというときの備えが求められている。
 (関口琴乃)