普天間PFOS問題 「農作物に無影響」疑義 識者「県の根拠は曲解」


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 国内で使用が原則禁じられる有機フッ素化合物、PFOS・PFOAが米軍普天間飛行場周辺から検出されている問題で、県が農作物への影響がないと判断した際、根拠とした論文を曲解しているとの指摘が識者から上がっている。県は論文から「農作物の可食部へのPFOS・PFOAの移行はほとんどなかった」と解釈したと説明するが、論文にその記述はない。インフォームド・パブリック・プロジェクトの河村雅美代表が21日までに明らかにし、「論文の趣旨を理解せず、結論ありきの曲解した解釈をしている」と批判した。

県説明「汚染 皮の部分」

 論文は、汚染された土で育った植物を食べることが、人体に有機フッ素化合物を取り込む一因となることを示すため、ドイツのヘッセン州立研究所が土壌から農作物へのPFOS・PFOA汚染を調べ、2008年に公開した。

 県環境保全課は16年12月に発表したPFOS・PFOA汚染に関する中間報告で、論文を根拠に「トウモロコシ、ジャガイモ、小麦などの可食部への移行はほとんどなかったとの報告がある」として「農作物への影響はないと考えられる」と記述した。

 一方、論文には「PFOS、PFOAは植物の中で貯蔵部分より成長部分で集約される」「小麦、エンバク、トウモロコシにおける穀粒と穂で顕著だった。ジャガイモの塊茎と皮でも証明された」との記述はあったが、「可食部への移行はない」とは書いていない。

 さらに河村氏は、情報公開請求で田芋のPFOS・PFOAの濃度の分析結果を入手したが、採取者や採取日時、比較対象とする地区などの記述がなく「調査として不備がある」と指摘した。今後、県に調査に関する意見書を提出する。

 県環境保全課は本紙の取材に対し、「そのままの記述はないが、ジャガイモであれば皮の方に汚染がいくという図表を見て解釈した。農作物に影響がないとの立場は変わらない」と説明した。 
(清水柚里)