失業率改善のワケは? 好景気で主婦層にも採用拡大 パルコ、セブン進出で人材の奪い合いさらに熾烈に


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サンエー浦添西海岸パルコシティの合同説明会で来場者に業務内容などを説明する各企業の担当者ら=宜野湾市の沖縄コンベンションセンター

 全国2倍と言われる高失業率が課題だった沖縄の完全失業率が、最新の2月調査で2・0%(季調値)を記録し、1972年の日本復帰前後を除くと初めて全国平均を下回った。企業の人手の確保がままならない中で、これまで労働市場からはじかれていた主婦や高齢者にも採用が拡大し、県内女性の失業率は1%台を記録した。県外企業の相次ぐ進出、ホテルや大型商業施設の開業など人員の奪い合いは続いており、労働力不足による受注機会のとりこぼしや人件費の上昇が企業経営の足かせになるとの懸念も出始めている。

 復帰直後の軍雇用員の解雇や、沖縄海洋博覧会関連の企業倒産発生などで県内の失業率は跳ね上がり、全国平均の約2倍と高い数値で推移してきた。90年代後半から2000年代初めには月別の失業率が9%台を記録し、大田昌秀革新知事時代には経済界を中心とした「県政不況」の掛け声で時の県政が批判にさらされるなど、失業率は政治的なテーマともなってきた。

 しかし、近年の観光客の急増に伴うホテル建設や大型公共事業の着工、飲食・宿泊関連の需要拡大に伴って、県内の求人が増えるなど雇用環境は一気に改善が進んでいる。好景気を背景に観光業や建設業など幅広い職種で求人が増え、2%台という急激な低下は関係者に驚きを広げてる。

■続く売り手市場

 求人おきなわの伊計紫穂営業部次長は「合同企業説明会を開くと、参加できずにあふれる企業も出ている。企業の採用意欲は非常に高い」と語る。各企業が採用活動を積極化し、求職者が有利な「売り手市場」が続いているといい「企業側はどうすれば従業員を確保できるか悩みもある」と説明する。

 連合沖縄の松田原昌輝副事務局長は「労働組合活動を長くやっているが、完全失業率がこれほど短期間に急激に改善したことは記憶にない」と驚く。短時間勤務など柔軟な働き方が県内企業にも定着し、子育て中の女性なども社会に進出しやすい環境になり、失業率の改善につながったと見ている。一方で「非正規労働者の割合はこれまでと変わっていない」と課題も感じている。

■中小企業の悲鳴

 今夏には「サンエー浦添西海岸パルコシティ」の開業や、コンビニ大手セブン―イレブンの沖縄進出が控える。パルコシティは約3千人の採用を目標に掲げており、昨年12月から説明会を複数回にわたり開催して採用活動を本格化させている。説明会ではテナント企業がオープン対応の特別時給として1100~1200円を示して求人。サンエーの担当者は「直前に人を集めるとどうしても跳ね上げるので、通常は3カ月前から始める説明会を前倒ししている」と説明する。

 セブンは沖縄進出から5年間で250店の展開を目指しており、一気に事業を拡大する方針だ。求人数の増加で雇用環境が改善する反面で、企業の人員確保は今以上に困難になるとの見方もある。

 県中小企業団体中央会の上里芳弘専務理事は「中小企業にとっては厳しい環境になる」と懸念し、賃金の上昇が体力の弱い県内中小・零細企業の経営を圧迫する可能性を指摘する。上里氏は「人員が集まらない状況でAI(人工知能)などを活用し、企業が業務の効率化を図ることも求められる」と強調した。
 (平安太一、沖田有吾)