1020万円相当!200キロ級17匹放流も… 釣り客への対応も苦慮 沖縄近海のクロマグロ漁獲停止命令に広がる困惑


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石垣漁港に水揚げされた今季初のクロマグロ=4月5日、石垣漁港

 沖縄県が17日に沖縄近海での30キロ以上の大型クロマグロ(本マグロ)の漁獲停止命令を出したことについて、県内の一部漁業者から困惑の声が上がっている。八重山漁協では停止命令以降、200キロ級のクロマグロが17匹も取れたにもかかわらず、放流せざるを得なかった。本島周辺の遊漁船漁業者についても、マグロ釣りで訪れる予約客への対応に苦慮する影響が出ている。

 クロマグロ漁の最盛期である2019年度前期(4~7月)の漁獲量が県が管理する「知事管理量」の95%に達したことから、県は18日から大型クロマグロの水揚げとその流通販売を禁止した。

 「知事管理量」は国が管理する「大臣管理量」以外のものすべてが含まれる。大臣管理量は国が管理する「大臣許可船」に割り当てられた漁獲量で、県内には約60隻しかないため県のクロマグロ漁のほとんどが知事管理量に該当する。
 県が漁獲停止命令を出して以降、7月31日までクロマグロを漁獲してはならず、漁獲してしまった場合は水揚げをせずその場で海に放さなければならない。

 八重山漁協は漁獲停止命令が適用された18~23日の間に、200キロ級のクロマグロ17匹(680万~1020万円相当)が取れたがその場で放流したという。クロマグロを避けるためキハダマグロの仕掛けをしても、意図せずクロマグロが取れてしまう場合もあり、漁業者はもどかしさを感じている。

 遊漁船漁業者の中には、漁獲停止命令の周知について問題を指摘する声もある。本島周辺で釣り客相手の遊漁船の関係者らは、漁獲停止命令が出た当日に漁協を通じて通知が来ただけで、漁獲量が制限に至るまでの段階的な報告が「なかった」と話す。

 遊漁船を営む本島周辺の漁師は、毎年の漁期に大物のマグロ目当てで来る県外の釣り客を船に乗せている。「予約は2~3年前から入っている。県外の釣り客は潮に合わせて計画を立て、仕事も数日休んで沖縄までやって来るので、突然の停止命令で困惑している」と訴えた。

 一方で県水産課は、県漁連を通じて定期的にメールとファクスで漁獲量の状況を報告していたと話しているが、末端の漁協や遊漁船には周知が不十分だったとみられる。県水産課は「漁獲停止命令は今年が初めてだったので、今後に向け反省点を吸い上げて漁業者と意見交換をしていきたい」と述べた。
 (石井恵理菜)