「トランプ大統領に届けて」 玉城デニー知事が米政府に初めて送った書簡


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玉城デニー知事

 玉城デニー沖縄県知事はこのほど、米軍普天間飛行場の早期運用停止を求める書簡を米国政府に送った。政府が県に約束していた飛行場の「5年以内の運用停止」が2月で期限を迎えたことを受け、名護市辺野古の基地建設に伴う埋め立てに7割超が反対した県民投票の結果を踏まえて改めて早期の運用停止を要請した。一方で名護市辺野古への移設が早期返還につながらないことを強調している。

 県によると、普天間飛行場の運用停止を求めて知事が米政府に直接、書簡を送ったのは初めて。24日に送付し、27日に公表した。玉城知事は「米政府は県民の民意を真剣に受け止め、飛行場の早期運用停止を含む一日も早い危険性除去に取り組んでほしい」とコメントした。

 書簡の宛先はハガティ駐日米大使とシュナイダー在日米軍司令官、県内のロバート・ケプキー在沖米総領事、エリック・スミス在沖米四軍調整官の4氏。書簡は「トランプ大統領に届けてほしい」と求めている。県担当者は「米国にとっても新基地に問題があるのだということを向こうの目線で理解してもらえる文章にした」と述べた。

 沖縄に基地負担が集中している現状を述べた上で、普天間飛行場周辺で発生した沖縄国際大学へのヘリ墜落や普天間第二小学校へのヘリの窓落下を挙げ、普天間飛行場の危険性を訴えた。同飛行場を抱える宜野湾市の人口密度について米シカゴと「同程度」だと説明した。

 名護市辺野古への移設に関連して県民投票で埋め立て反対が7割を超えたことも紹介した。軟弱地盤の判明で「新基地の完成は見通せない」と指摘。完成後も地盤沈下や護岸倒壊、液状化の恐れがあるとし「地震が発生すれば基地として使えなくなる可能性もある。海兵隊の即応能力を損なう恐れがある」と強調した。

 <書簡要旨>

 わが国の安全保障および東アジアの平和と安定の維持に多大な尽力を頂き、感謝している。県は日米安全保障体制を認める立場だが、国土面積の約0・6%の本県に在日米軍専用施設の約70%以上が存在する現状は異常で、容認できない。普天間飛行場の周辺では事件・事故が多発して地域住民の生命・財産に不安を与えている。県はこれまで飛行場の閉鎖・返還を求めてきた。だが貴国は飛行場の運用停止どころか外来機の訓練などをし、真に努力しているのか疑念がある。

 県民投票で約72%が辺野古埋め立てに反対を投じたのに、日本政府は移設を強行している。県は軟弱地盤の存在で新基地の完成は見通せない。完成しても地盤沈下が続いて危険が生じる。地震が発生すれば、液状化、護岸の倒壊・損壊で海兵隊の即応能力を損なう恐れがある。

 移設できないなら普天間飛行場を使い続ければよいと考えるかもしれないが「世界一危険」と言われる状況は変わっていない。飛行場を使用し続けて全基地への反基地運動や反米運動に発展すると、嘉手納基地やホワイトビーチなどの運用を含めて日米安保体制や日米同盟に大きな影響を与えかねない。国内外の既存施設などへの訓練・常駐機移転が賢明だ。

 米国は海軍と空軍で中国・北朝鮮問題に対応することができる力を有する国で、トランプ大統領が復活させる「偉大なる米国」は普天間飛行場の運用停止だけでなく、沖縄からの県外・国外移設という賢明な選択をすると信じている。運用停止に向けて取り組み、トランプ大統領にこの書簡を届けるようお願いする。