「口が裂けても推進、容認とは言えない」 公認候補の発言 自民沖縄県連に衝撃 選挙最終盤まで「足かせ」に


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テレビの開票状況を見る安里繁信氏(右から4人目)と支持者ら=21日、那覇市牧志の選挙事務所

 参院選沖縄選挙区は「オール沖縄」勢力が支援する新人の高良鉄美氏が、自民新人で公明、維新の推薦を受けた安里繁信氏に6万3903票差をつけて勝利した。共に政治経験のない新人同士の対決の背景を探った。

 「口が裂けても推進、容認とは言えない」。

 6月22日、原稿を持たずに政策発表会見に臨んだ安里繁信氏は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設について賛否を問われ、きっぱりと言い切った。

 辺野古移設容認を掲げる自民党県連関係者は、公認候補の安里氏から県連方針を否定するような発言が出たことに衝撃を隠せなかった。発言の影響は選挙選最後まで重い「足かせ」となった。

 自民党の候補が、移設の賛否を明確にした4月の衆院3区補選から一転し、無党派層、公明党支持者対策として賛否を明確にしない方針に対して、事前調整の段階で北部選出の議員を中心に異論が出ていたという。さらに新基地建設に否定的とも取れる発言は完全に予想外だった。

 政策発表の直後、県連の一部からは「自民党公認を取り消すべきではないか」という議論まで出た。名護市を中心に実働部隊となる市町村議員の出足が止まった。

 辺野古推進を明確に打ち出した玉利朝輝氏の出馬も誤算だった。自民県連関係者は「辺野古を容認して闘うという衆院3区補選でつくった流れが止まった」と嘆いた。

 安里氏周辺は「自公維」の枠組みの基礎票に加え、経済界での活躍やテレビ出演などによる知名度を活用し、無党派層を取り込み30万票以上を獲得して勝利する青写真を描いていた。

 しかしここでも誤算が生じた。沖縄観光コンベンションビューロー会長時代に物議を醸した言動や昨年知事選の保守候補一本化に向けた過程で生じた経済界の一部との確執は解消されず、候補者選定段階でも経済界の重鎮からは再考を求める声が上がるなど、従来自民党を強固に支えてきた企業の動きは鈍かった。

 別の県連関係者は「基礎票と言っても、公認だからと言って簡単に取れるものではない。企業の社員だけでなくその家族や親戚まで声掛けを徹底して初めて入る。ガラス細工の上に成り立つものだと理解していなかったのではないか」と指摘する。

 建設業者は「比例があるので投票には行くが、選挙区では白票や泡沫候補に投票した人も多かったのではないか」と話す。

 自民党や報道各社の世論調査では一貫して劣勢と伝えられ、公示翌週には自民党の重点地区から外れた。

 自民党に強い逆風が吹いた2016年の参院選で島尻安伊子氏が獲得した24万9955票と比べ、維新も推薦したにもかかわらず約1万5千票下回り、基礎票を固めきれなかった。

 それでも県連関係者は「企業が動かない中で、予想よりも善戦したと言える。評価は難しい」と漏らした。
 (19参院選取材班)